2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08268
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 淳 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 言語と真理 / 空海 / 奈良時代・平安時代初期の仏教 |
Research Abstract |
理智概念および理智法身の用語は空海の思想の上で重要な役割を果たしているが、この概念・用語がどのような源流を持っていたのかは明らかでなかった。そこで、中国仏教および空海と同時代の日本仏教の仏教文献を調査し、理智の概念が中国の吉蔵に見出されること、および理法身・智法身の用語は空海以前の日本仏教の智光によって用いられていることを解明した。その成果を2003年9月に仏教大学で行われた日本印度学仏教学学会において発表した。この成果は同学会誌に掲載される。 また大乗涅槃経の恒河七衆生の例えは、空海と同時代における一分不成(成仏できない人もいる)・悉皆成仏(皆成仏できる可能性を持っている)との間の論争で重要な役割を果たしているが、その典拠は阿含経に見いだされるが、さらに『大毘婆沙論』の中における用法と近いことを指摘した、その成果を2003年9月に天理大学で行われた日本宗教学会において発表した。この成果は同学会誌に掲載される。 さらにその後、追加して研究を進めたところ、『大毘婆沙論』の中でもアビダルマ仏説論と関係が深いことが見出された。このことより、北伝仏教の聖典観や大乗仏教の興起を考える上で重要な示唆を与えると思われる。その成果は研究室雑誌に発表する。 また、空海における真理と言葉との関係についての研究を進めていく中で、『芸文類聚』に所蔵される中国・晋の欧陽建の『言尽意論』に「言葉により真理を表すことができる」という思考様式が示され、これは空海の密教観である「顕教は真理を言葉で表せないとするが、密教では真理を言葉で表しうる」とする前駆形態として注目され、空海も同文のことを知っていた可能性は高いと考えられ、両者の関係を考察中である。その成果は現在まとめており、来年度に発表する予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 藤井 淳: "理法身と智法身"印度学仏教学研究. 印刷中.
-
[Publications] 藤井 淳: "大乗涅槃経と阿含経 水喩の考察"宗教研究. 印刷中.
-
[Publications] 藤井 淳: "『大乗涅槃経』とアビダルマ仏説論"インド哲学仏教学研究. 11. 42-56 (2004)