2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境問題の報道と世論の関係性―環境問題の報道と世論潮流に関するマスコミュニケーション過程の社会学/社会心理学的研究―
Project/Area Number |
02J08277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関谷 直也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 環境報道 / 環境情報 / 環境広告 / 環境問題 / 公害 / 世論 / 風評被害 / 安全観 |
Research Abstract |
今年度は、特に、市民の環境問題に関する世論の変遷、環境問題への関心の推移、環境問題への心理的認知など、市民の社会心理に焦点をあてて研究を行った。 第一に、過去に行った環境保護に関する共同研究での調査、1999年度と昨年度に行った東海村、所沢市、水俣市での共同研究の調査結果を再分析して環境問題に共通する人々の心理を検討した。 結果、報道への接触量は、直接的に不安感や地域の環境における安全性と関係するというよりも、環境問題への関心度を媒介として、自身の健康や地域の安全性に関わる不安と関連があることが示唆された。また、住民は、有害化学物質汚染が生じた場合には、(1)「環境は将来的に悪くなる」、(2)「子供への影響」、(3)「遺伝的影響」、(4)「伝染性」を誤解されると捉え、(5)地域外の人から「忌避」されることを過度に恐れるという、一般的な認知的枠組みがある。複雑な環境問題を心理的に単純化して、理解している。 第二に、環境問題をテーマとした広告を出稿している企業に対して聞き取りを行い、その苦心や、市民の心理を如何に捉え、広告を訴求しているかを聞き、以下の2点を見出した。 第一点は、世論として、(1)1990年前後「環境対策を第一に考えなくてはならない」という意識が、現在は「経済との両立」が十分に浸透してきている、(2)1995年前後に、リサイクル、再生紙などの良い印象に変化した、(3)京都会議を経て、Co2増加や温暖化問題が認知され、関心が非常に高まっている、と考えていることである。 第二点は、広告の内容的には、(1)環境負荷の高い企業ほど広告を出稿しやすい、(2)本業に関連する環境対策が評価が高い、(3)とにかくわかりやすさを心がけていることがわかった。 複雑な環境問題や環境対策は、広告訴求としても、単純化され、論理的に組み立てやすく、わかりやすくなければ理解されないということである。 第三に、戦後の公害報道、原子力関連事故、近年の風評被害とよばれるような事例に関する新聞記事の収集を行った。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 関谷直也: "風評被害の法政策-「風評被害」補償における法的論点・対応策とその改善案-"災害情報学会学会誌「災害情報」. 2. (2004)
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[Publications] 関谷 直也: "企業における「環境問題」と「コミュニケーション」"日本広報学会環境経営コミュニケーション研究会「環境経営コミュニケーションの現状と課題」. 1. 28-33 (2003)
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[Publications] 関谷 直也: "「環境広告」の実態とその変遷"東京都組合等中小企業連携組織化開発等支援事業報告書「広告テーマとしての『環境問題』. 1. (2004)
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[Publications] 関谷 直也 ほか: "日本人の安全観"原子力提案公募研究平成15年度報告書. 1. (2004)
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[Publications] 関谷 直也: "風評被害"光文社(予定). (2004)