2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国都市部の外来人口をめぐる階層化と階層間移動に関する実証研究
Project/Area Number |
02J08310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 真美 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中国 / 外来人口 / 階層 |
Research Abstract |
本年度は、農村出身労働力の階層化を明らかにするため、広域的な労働市場の形成に着目して現地調査に基づく実証的な研究を進めてきた。 労働市場の形成については、高度経済成長期以来の日本の労働市場研究の蓄積を参照枠組とした。日本の事例では、都市部で急増した労働力需要を満たすため、職業安定行政が新規労働力の労働市場参入に果たした役割が大きい。学校と職安の連携による職業紹介機能が広域的な労働力移動をスムーズに実現した。 さて、現代中国においてはこれまで、地方出身労働者の都市労働市場参入は、情報が限られているため、専ら親戚・友人のネットワークに頼るとされてきた。一方で、こうしたルートによる就職は階層移動を実現しにくいものであることも明らかになってきている。こうした事実を受け、今年度は上海の地方出身労働者に対する職業移動調査と、四川省成都市郊外の2県における職業紹介所調査を行った。これにより、都市で就業する外来人口の中には、既に一部職業紹介所を経由して就職を実現している者も見られていること、また、農村労働力排出地に立地する職業紹介所の役割は、主に遠隔地への就職を斡旋するものであり、近年増加し続けている私営・外資企業への工場労働者の供給に有効なルートとなっていることが明らかになった。これまでの公営の職業紹介所、親戚・知人ネットワークによる職業紹介機能を補う入職経路として成長しつつあると考えられる。
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