2002 Fiscal Year Annual Research Report
アラビア語写本の校訂を通じた中世イスラームにおける天文観測器具にまつわる歴史研究
Project/Area Number |
02J08323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 古代中世精密科学史 / アストロラーブ / 中世イスラーム天文学史 / 中世イスラーム数学史 |
Research Abstract |
今期は、イギリスやフランス、オランダ、ドイツ、スペインの図書館から、天文学や数学に関する多くのアラビア語写本のマイクロフィルムを取り寄せ、コピーし、目次を製作するといった、内容分析を進めるための資料整理を主に行った。そのため、今期中には成果を具体的な論文の形でほとんど発表できなかったが、このような資料整理を継続するなかで、いままで未発見だった資料を発見することに成功した。例えば、ユークリッド『原論』に対する比較的古い注釈書として題目だけ知られていたが未発見だった、アンターキーによる注釈を、取り寄せたマイクロフィルム中から発見した。アンターキーは、インド式計算法に関する著作を書いたことも知られている。(ただし、この著作も題名だけしか伝わっておらず、未発見。)それゆえ、この注釈書を通じて、当時、インド式計算法を身につけた人物が、『原論』をどのような視点で解釈したのかを明らかにできるのではないかと期待している。また、天文観測器具に関する著作の、おもに序文を分析することで、なぜ当時の天文学者が天文観測をするのかの理由として、ほぼ共通の見解が展開されていることがわかった。すなわち、天文観測を行っているということは、天文学者たちにとって、当時、一大勢力だった「占星術師」に対して、その厳密性を論難し、自らの厳密性を裏付けるための武器だった。このような、天文観測に対する姿勢を、今後より多くの文献で裏付けることで、占星術師たちとの論争の具体的な内容をたどることができ、ひいては科学という営為が、なぜこれほど力をもちえたのかを見通せるのではないかと考えている。
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Research Products
(2 results)