2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08327
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤幸 知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミツバチ / 攻撃 / 行動 / ウイルス / 感染 / 脳 |
Research Abstract |
ミツバチの攻撃性に関与する候補因子として攻撃性の高い個体の脳から同定されたKakugoウイルス(KV)について、その感染が攻撃行動の制御に関わる頻度を調べるために、攻撃蜂におけるKVの感染率の検討を試みた。攻撃蜂1匹ずつにおけるKVゲノムRNAを定量的RT-PCR法を用いて定量した結果、感染が認められたのは一部の個体のみだった。このことから、攻撃蜂の全てがKVに感染しているわけではなく、ミツバチの通常の攻撃行動の制御には、KV感染と独立な機構も存在する可能性が考えられた。 様々な働き蜂について、多くの個体数をまとめてKV量を検討した結果、コロニーレベルでのKV量が少ない状況では攻撃蜂に特異的なKVの感染が生じていたが、コロニーレベルでのKV量が多い状況では、攻撃蜂以外の働き蜂からもKVが検出される例が見出された。このことから、KVがミツバチのコロニー内に感染している場合には、コロニー内のKV量に応じてKVと攻撃行動との相関関係の有無が決まっており、KVの攻撃蜂特異的な感染が、コロニーレベルでのKV量が少ない状況に限定して成立している可能性が考えられた。これは、KV感染と攻撃性との関連について、感染の有無だけでなく、感染量を考慮する必要性を示唆した点で重要な知見である。 KV量の高いコロニーの一つにおいて、巣内の働き蜂におけるKV感染率・量を経時的に検討した結果、KVの検出率やKV検出量に増加傾向が見られ、感染の拡大が推定された。このコロニーでは、幼虫の死骸が多数存在し、ミツバチの疾病であるチョーク病様の徴候を示していた。また、ミツバチのコロニーに寄生するミツバチヘギイタダニの発生が認められた。コロニーが病的な状態にある場合には、攻撃蜂以外の働き蜂にもウイルスの感染が拡大し、感染率が上昇する可能性が考えられた。ウイルスに感染したミツバチによる自殺的攻撃行動がコロニーの病原性と関連する可能性は、ミツバチの攻撃行動の進化を考察する上でも興味深いと思われる。
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Research Products
(3 results)