2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 誠祥 東京大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 嗅覚 / 感覚ゲーティング / 高次嗅覚野 / 内的状態 / 嗅皮質 / 電気生理学 |
Research Abstract |
哺乳類では嗅皮質は匂い学習に重要な役割を果たしていると考えられるが、嗅皮質における匂い情報処理機構はほとんど明らかになっていない。 嗅覚系以外の感覚系において一般的に知られている視床における覚醒レベル依存的な感覚情報のゲーティングが、視床経路を持たない嗅覚系においても同様に行われているかどうかを調べた。ウレタン麻酔下ラットの脳波パターンはslow wave state (SWS)とfast wave state (FWS)を交互に遷移することが知られている。この二つの状態は覚醒/睡眠状態に対応していると考えられている。SWSとFWSにおいて匂い分子刺激に対する嗅皮質細胞のスパイク応答を調べたところ、SWS時と比較してFWS時において有意に応答が大きかった。記録した嗅皮質の89%がFWS時に有意な匂い応答の増強を示したことから、嗅覚系においても覚醒レベル依存的な感覚情報のゲーティングが行われていることが示唆された。嗅球の細胞では25%しか状態依存的な応答の変化を示さなかった。このことから嗅覚系における感覚ゲーティングは主に嗅皮質において行われていると考えられる。 次に嗅覚系における覚醒レベル依存的な感覚ゲーティングの細胞メカニズムを調べる目的で、嗅皮質細胞の細胞内記録を行った。SWS時には嗅皮質細胞の膜電位は数100msの過分極相と数100msの脱分極相を交互に繰り返すのに対し、FWS時には脱分極状態が続いた。嗅球の電気刺激に対するEPSPのピーク膜電位はSWS時の過分極相でもっとも低かった。このことからSWS時の嗅皮質細胞膜電位の過分極相の存在が嗅覚ゲーティングのメカニズムであることが示唆された。 本研究により一次感覚皮質への中心性経路が視床を介さない嗅覚系において、覚醒レベル依存的な感覚ゲーティングが行われていること、さらにその細胞メカニズムがはじめて明らかになった。
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Research Products
(1 results)