2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08373
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 慈子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 色覚 / 色覚異常 / チンパンジー / オマキザル / 3色型色覚 / 2色型色覚 |
Research Abstract |
新世界ザルでは同種内に3色型色覚の個体と2色型色覚の個体が混在していることが知られている。また、ヒト以外の旧世界霊長類の色覚は均一であるとされてきたが、近年、旧世界ザルであるカニクイザルにおいて、2色型色覚の個体が発見され(Onishi et al.,1999;2002)、さらに最近チンパンジーにおいても色覚異常の個体が、1個体発見されている(寺尾ら、未発表、三上ら、2002)。2色型色覚は、赤い果実あるいは若葉の検出に、3色型色覚よりも不利であるといわれている。一方、2色型色覚の存在理由として、2色型色覚はその他の採食行動において3色型色覚よりも有利であるという可能性が指摘されている。また、2色型色覚は採食において不利ではあるが、群れの中で他者の採食行動をモニターし、効率よくエサを得ているため淘汰されないという可能性も考えられる。 今年度、特別研究員は、フサオマキザル(Cebus apella)(3色型:n=1;2色型:n=3)と、チンパンジー(Pan troglodytes)(正常3色型:n=4;色覚異常(異常3色型):n=1)を対象に3色型色覚の有利性を確認するため、石原色盲検査票を模して作成した刺激を用いた弁別課題をおこなった。サルの課題は緑の背景の中に丸い赤印のある刺激と、緑のみの刺激を弁別することであった。その結果、フサオマキザル、チンパンジーともに、3色型の個体は、有意にこれらの刺激を弁別することができたが、フサオマキザルの2色型色覚の個体、チンパンジーの色覚異常の個体は、弁別することができなかった。このことから、この課題において3色型色覚の個体は、2色型色覚の個体よりも有利であった、つまり3色型色覚の有利性が示されたといえる。また、今回の実験により、チンパンジーの色覚異常個体が初めて行動的に確認された。
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