2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和型触媒的不斉炭素-炭素結合形成反応の開発と実践的合成への展開
Project/Area Number |
02J08406
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 直哉 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 環境調和型有機反応 / 触媒的求核的活性化 / アルキルニトリル / ソフトルイス酸 / CpRu錯体 / DBU |
Research Abstract |
従来、炭素求核剤を用いる炭素炭素結合形成反応は、当量以上の試薬を用いて別途調製した有機金属試薬、金属エノラート類を用いる例が主流であった。大量の廃棄物を生むこの反応形式に対して、反応系中で炭素求核剤を触媒的に発生させる手法は、廃棄物の生成を大幅に削減でき、環境調和型有機反応の観点から大きな注目を集めている。最近、ケトンやオキサゾリジノンを触媒的に求核的活性化する方法論は種々報告されるようになったが、比較的低い酸性度を持つ単純アルキルニトリルの触媒的求核的活性化法の開発は立ち後れていた。そこで、安定で取扱い易く、種々の官能基に容易に変換できるニトリル官能基の有機合成化学における有用性を鑑み、単純アルキルニトリルを温和な条件下で触媒的求核的活性化をする方法論を展開することとした。アルキルニトリルを求核剤、アルデヒドを求電子剤とする反応を視野に入れ、ニトリルのそのソフトなルイス塩基性に着目し、ソフトなルイス酸でニトリルのみを官能基選択的に活性化することを試みた。種々検討の結果、2.5-5mol%のCpRu(PPh_3)(CH_3CN)_2PF_6錯体を用いるニトリルを官能基選択的に活性化することで、DBUのようなアミン塩基でもアセトニトリルのα-水素を脱プロトン化して求核的に活性化し、アルデヒドへの付加反応が穏和な塩基性条件で進行することを見いだした。さらにメカニズム解析の結果、触媒サイクルにおけるRuアルコキシドが不安定なRu-DBU錯体の生成を促進すること、また、NaPF_6の添加によりRuアルコキシドがすみやかにNaアルコキシドに変換され触媒効率を上昇させることを突き止めた。この2.5-5mol%のRu錯体、5-10mol%のDBU、10mol%NaPF_6から成る三元触媒系により、アセトニトリルの触媒的求核的活性化が円滑に進行し、種々のアルデヒドと付加反応を起こしβ-ヒドロキシニトリルを77-93%の収率で与えた。さらに本反応条件はジフェニルフォスフィノイルイミンに対する付加反応にも適用可能で、対応するβ-アミノニトリルが77-91%の収率で得られた。
|
Research Products
(1 results)