2002 Fiscal Year Annual Research Report
対人恐怖症や精神分裂病等にみられる自我漏洩感の発生メカニズムの認知論的解明
Project/Area Number |
02J08425
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 淳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 自我漏洩感 / 対人恐怖症 / 総合失調症 / 社会恐怖 / 社会不安障害 / 自我障害 / 自我漏洩症状 / 関係妄想 |
Research Abstract |
自我漏洩感は、対人恐怖症や統合失調症などに広くみられる重要な症状であるが、これまで十分に研究されてこなかった.平成14年度の研究では、科学的研究に不可欠な測定法の開発を中心課題とし、症状の実態把握につとめた。その成果は2本の論文にまとめられ、そのうち1本については『性格心理学研究』誌にすでに受理・印刷中である。 この論文は、自我漏洩感研究の基礎として、(1)健常者において自我漏洩感が発生する状況を記述し、(2)体験状況を整理した。研究1では、健常者を対象として、自我漏洩感の頻度と自由記述を求めた。その結果、体験率が50%以上の項目は、15項目中9項目あった。そして、多くの体験状況を得ることが出来た。研究2では探索的因子分析を用いて、自我漏洩状況の分類を試みた。その結果、「異性の好意状況」「以心伝心的に伝わる状況」「賞賛される状況」「共感される状況」「不潔状況」「赤面状況」「親しい人にお見通し状況」「平静を装う状況」「苦手な相手状況」の9つの状況因子を得た。さらに、これらの状況因子を、(1)自分から相手に伝わる内容(情報の属性)、(2)相手に伝わることによって予期される結果、(3)相手に対して持っている感情の3側面から分類できた。臨床的な話題との関連から、自我漏洩感を「何も言わないのに自分の内面的な情報が伝わると感じ、ネガティブな結果が予期される体験」と定義した。発生状況についてはこれまで複雑ものと考えられる場合が多く、整理されることがなかった。しかし、この発生状況の整理は、測定のキーポイントであり、測定法開発の重要な基礎ということができる。この研究を基盤として、自我漏洩感の症状の測定法を開発した。この成果は「精神科診断学」誌に投稿中である。
|
Research Products
(1 results)