2003 Fiscal Year Annual Research Report
対人恐怖症や精神分裂病等にみられる自我漏洩感の発生メカニズムの認知論的解明
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02J08425
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 淳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自我漏洩感 / 対人恐怖症 / 統合失調症 / 社会恐怖 / 社会不安障害 / 自我障害 / 自我漏洩症状 / 関係妄想 |
Research Abstract |
自我漏洩感は、対人恐怖症や統合失調症などに広くみられる重要な症状であるが、これまで十分に研究されてこなかった.平成15年度の研究では、医科学研究におけるスタンダードなモデルである『素因-ストレスモデル』に基づき、自我漏洩感の発生メカニズムを実証的に検討した。自我漏洩感の発生メカニズムの解明は、精神病理学的な意義ばかりでなく、治療法の進展まで望めるという点で治療的意義も備えている研究課題である。 素因-ストレスモデルの実証に先立って、素因(自我漏洩感になりやすい性格)とストレス(自我漏洩感を引き起こすストレス)を特定した。まず、素因と自我漏洩感の苦痛度との関連性を重回帰分析によって調べた。その結果、加害的な意識、秘密主義的な傾向、拒否回避的な傾向などが強いほど、自我漏洩感にネガティブな意味づけをしてしまい、苦痛を感じていることが明らかになった。この研究成果については、心理学専門誌に投稿中である。また、ストレスに関しても、先般行なった調査から、体験率が高く、自我漏洩感を生じさせる代表的なものを選び出すことに成功した。 そういった基礎的研究にもとづき、縦断調査手法をもちいて、素因-ストレスモデルを検討した。これは、素因を持っている人がストレスを受けることで自我漏洩感が生じていることを確認する作業であり、500人レベルの大調査を2週間間隔で2回行なった。この研究成果については、分析終了次第、投稿、内外の心理系学会で発表予定である。 なお、14年度の研究成果である、アセスメント技法については、『精神科診断学』誌に本年度受理され、現在印刷中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 佐々木淳, 丹野義彦: "自我漏洩感を体験する状況に対応した測定尺度の作成"精神科診断学. 印刷中.
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[Publications] 佐々木淳: "自我漏洩感とは 菅原健介(編)人の目に映る自己"金子書房. 2 (2004)
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[Publications] 佐々木淳: "社会恐怖と観察者視点の自己注目 菅原健介(編)人の目に映る自己"金子書房. 2 (2004)