2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08427
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野々部 領子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | L-アミノ酸オキシダーゼ / マウスミルク / 牛乳 / 過酸化水素 / ラクトペルオキシダーゼ / チオシアン酸塩 / 細菌毒性 / 乳房炎 |
Research Abstract |
乳房炎は乳牛において世界中で最も多発する疾病であり、主に乳房内での細菌の異常増殖により発症する。乳量の低下、廃用牛としての損失など、乳房炎による酪農家の負担は計りしれず、また抗生物質など薬剤の投与以外に有効な治療法は確立されていない。治療による抗生物質の使用により、将来的に抗生物質の効かない細菌を生み出すことからも、投薬での治療法よりもむしろ根本的な解決策として「乳房炎に罹らない乳牛」を育種することが求められている。 これまでにマウスミルクにおいてL-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)とラクトペルオキシダーゼ(LPO)を新規物質として発見し、LAOに関しては特許(工業所有権番号2002-274082)を取得した。またマウスミルクのLAOとLPOの両物質は触媒反応により、乳房炎の原因菌の増殖を抑制することを明らかにした。ところが牛乳にはLPOが豊富に存在することは知られているが、LAOのような過酸化水素を効率よく産生する物質は知られていない。 そこで今年度は牛乳における過酸化水素産生物質の探索を行い、その生理学的存在意義について検討を行った。まず牛乳中のタンパク質をゲル濾過にて分離後、各フラクションの過酸化水素の発生を調べたところ、LAOとは異なる分子量約20kDaの過酸化水素産生物質の存在を明らかにした。またこの物質の過酸化水素産生量は温度・時間に依存して増大した。さらに乳房炎との関係を明らかにするため、乳房炎乳の活性を測定し、乳房炎罹患の指標となる牛乳中の体細胞数との相関関係を調べたところ、乳房炎乳の過酸化水素産生活性は健常乳に比べて低く、体細胞数と負の相関関係が見られたことから、この物質は乳房炎の罹患に大きく関与していると考えられる。以上の結果から乳牛において過酸化水素産生物質の生産能力を高めれば、抗生物質に頼らず、乳房炎に罹りにくい乳牛の育種が可能であると考えられる
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