2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08427
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野々部 領子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | L-アミノ酸オキシダーゼ / マウスミルク / 牛乳 / 過酸化水素 / ラクトペルオキシダーゼ / 活性酸素 / 細菌毒性 / 乳房炎 |
Research Abstract |
これまでに泌乳期特異的にマウス乳腺で発現する新規の遺伝子としてL-アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を発見し、ミルク中のLAOの実在と性状を明らかにした。この研究成果は2002年のThe Journal of Biological Chemistryで報告し、さらにL-アミノ酸オキシダーゼの名称で特許(工業所有権番号2002-274082)を取得した。 LAOはアミノ酸を分解して過酸化水素を発生し、さらに牛乳にはラクトペルオキシダーゼ(LPO)が存在し、過酸化水素から活性酸素を発生させることが知られている。この過酸化水素と活性酸素は細菌毒性を有するため、乳房内で乳房炎の原因である細菌の異常増殖を防いでいる可能性が考えられる。そこで本年度はLAOと乳房炎抑制機構との関係について検討するため、ウシの乳房炎乳から分離した4種類の代表菌種を用いて、マウスミルクLAOによりその増殖がどのような影響を受けるかを調べ、さらに牛乳における乳房炎抑制機構を調べた。その結果、マウスミルクLAOによって産生される過酸化水素によって3種類の細菌の増殖が抑制された。さらにこれまでに報告されていないマウスミルクLPO活性を検出することに成功し、LAOとLPOの触媒反応から産生される活性酸素によって残り1種類の細菌の増殖が抑制された。以上の結果からマウスミルク中のLAOとLPOの触媒反応によって生成される過酸化水素や活性酸素により、乳房炎の最大の原因である乳房内の細菌の異常増殖を効率よく防いでいることが明らかとなった。また牛乳中においても過酸化水素を産生するタンパク質を発見したので、今後はさらにこのタンパク質の過酸化水素産生メカニズムや性状の解明を行う予定である。
|