2003 Fiscal Year Annual Research Report
機能性糖の生産を目指した遺伝子工学による糖分解酵素の改質と生産
Project/Area Number |
02J08446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 誠 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セロビオース脱水素酵素 / 酸性セロオリゴ糖 / 機能性食品 / 遺伝子工学 / 点突然変異導入 |
Research Abstract |
本研究では,近年,高機能性食品として注目されてきている酸性糖を生産するため,セロビオースおよびセロオリゴ糖の還元末端を酸化しラクトンを生じる反応を触媒する酸化還元酵素であるセロビオース脱水素酵素(CDH)に注目し,この酵素を遺伝子工学的に高機能化し,それを用いることで機能性酸性セロオリゴ糖を効率良く生産することを目的としている。 昨年度は,"食の安全性"ということに対する社会の意識の高まりを考慮し,食用菌からCDH遺伝子をクローニングした。しかしこの酵素は自然界においてどのような役割を果たしているかという生理的意義については全くわかっていないことから,これを明らかにすることは,酵素の高機能化という観点からも有益であるということが考えられた。そこで本年度の目的の一つとして,この酵素がセルロース分解に関与しているのか,そして,もしそうであるならば,どのように関わっているのかを,遺伝子発現レベルで明らかにすることを試みた。その結果,CDH遺伝子はセロビオースに対してポジティブな応答を見せたが,これまで一般にセロビオースをグルコースにする役割を果たすと考えられてきたβ-グルコシダーゼ遺伝子の発現はネガティブであった。このことから,CDHは自然界において,セルロース分解,特にセロビオース代謝において,何らかの重要な働きをしていることが示唆された。このことについては,現在,FEMS Microbiology Lettersに投稿中である。 また,本年度においては,点突然変異導入によるCDHの改質も行った。基質特異性または電子伝達に関与すると予測されるアミノ酸残基を三次元構造から予測し,それを点変異のターゲットとして変異体作出を試みた結果,後者の変異体を得ることに成功した。これにより,この変異体の解析を進めることによって,CDHの電子伝達を制御することが可能になるかもしれない。これについては,現在,投稿準備中である。
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