2003 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素誘発性肺高血圧症における肺動脈内皮機能障害および血管肥厚の分子機構
Project/Area Number |
02J08467
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 幸久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 肺高血圧 / 肺動脈内皮細胞 / 低酸素 / NO |
Research Abstract |
肺高血圧は慢性気道閉塞疾患や僧帽弁狭窄など生体が低酸素状態になる心肺疾患に併発する。現在簡便かつ有効な治療薬が存在せず、新たな治療法に関する研究には多くの関心が寄せられている。血管内皮細胞から産生されるNOは血管平滑筋を弛緩させ、その増殖を抑制する作用をもつことから、肺高血圧患者で観察される肺動脈NO産生障害はその病態進行に重要な役割を果たしていると考えられている。昨年度までに、長期低酸素負荷肺高血圧モデルラットの肺動脈を用いて長期低酸素負荷により誘発される肺動脈内皮機能障害が内皮細胞の形態変化、蛋白質の細胞内局在変化を伴ったCa^<2+>流入機構の異常、NO合成系に関わる機能蛋白質とNO合成酵素(eNOS)の相互関係異常などによることを示した。本年度は上記のモデルを用いた新たな治療薬の評価、開拓を目的とし、近年様々な血管保護作用を持つことが示唆されているHMG-CoA還元酵素阻害剤、フルバスタチンの肺高血圧に対する治療効果を検討し、以下の点を明らかとした。 1、フルバスタチン投与は、1-3週間低酸素負荷したラットに観察される肺高血圧(右心肥大、肺動脈圧亢進、肺動脈肥厚)の発生、進行を有意に抑制した。 2、肺動脈内皮細胞に対するフルバスタチンの治療効果を検討した結果、フルバスタチンは肺高血圧ラットに観察される、肺動脈内皮細胞の萎縮やeNOS蛋白質翻訳以降の異常を改善することにより、肺動脈内皮細胞のNO産生障害を回復させた。 本年度の研究成果はHMG-CoA還元酵素阻害剤が肺動脈内皮細胞機能に保護効果をもち、肺高血圧治療薬として有用である事を初めて明らかにしたものであり、今後の新しい治療薬戦略の基礎となると考えられる。
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