2003 Fiscal Year Annual Research Report
組換えウナギ生殖腺刺激ホルモンの生理作用の解明と人為催熟への応用
Project/Area Number |
02J08477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
亀井 宏泰 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ウナギ.Anguilla japonica / 生殖腺刺激ホルモン / 人為催熟 / 配偶子形成 / 性ステロイド / 組換えホルモン作製 / 脳下垂体 / 糖蛋白質ホルモン |
Research Abstract |
本年度は性的に未熟な飼育ウナギの脳下垂体中に存在するウナギFSHの存在を免疫組織化学的に検出することに成功し、同様の脳下垂体を用いて天然物としてのウナギFSHを単離・精製することを試みた。未熟な飼育ウナギの脳下垂体約5000匹分を入手した。それらの抽出物を出発材料にゲルろ過-二段階の陰イオン交換クロマトグラフィーにより純化されたウナギFSHを得ることに成功した。次に精製したウナギFSHの未熟ウナギの精巣における生理作用をin vitroの組織培養系を用いて検討した。その結果、ウナギFSHはこれまでに酵母発現系を用いて作製した組換えウナギFSHと同様の生理活性を示し、ウナギの精子形成誘起ステロイドである11-Ketotestosteroneやその前駆体であるTestosteroneの分泌を生理的な濃度で顕著に上昇させた。また、ウナギ精原細胞の増殖を誘導するEstradiol-17βについてもわずかながらその分泌を上昇させる活性が見られたので組換えウナギFSHを用いた活性試験の結果とも照らし合わせて現在、再度検討を行なっているところである。また、成熟の進んだ精巣に対してよりも、未熟なウナギ精巣に対して組換えウナギFSHは顕著なステロイド分泌促進作用が見られるという結果も得ることができた。また今回純化したウナギFSHのβサブユニットのアミノ末端部分は組換えウナギFSH作製時に予想した配列と同じであることが天然ウナギFSHβサブユニットのアミノ末端アミノ酸配列解析により判明した。以上のことを併せて考えるとウナギFSHは未熟なウナギの、生殖腺の発達およびその配偶子形成に不可欠なはたらきをすることが明かとなり、これまでに作製した組換えウナギFSHに見られる生理活性は天然のウナギFSH野生理活性を反映していることも示された。 また、人為催熟中のウナギおよび天然で性成熟が開始された下りウナギを用いて、成熟の進んだウナギの脳下垂体中にはもう一種のウナギGTHであるLHが発現しておりタンパク質としてその脳下垂体中に存在することを免疫組織化学的に検出することに成功した。さらにウナギLHを含む脳下垂体抽出物はウナギの最終成熟誘起ステロイドである17α、20β-dihydroxy-4-pregenen-3-oneの分泌を促進させた。この活性は組換えウナギFSHおよびウナギLHを含まない脳下垂体抽出には確認できないことから、このことがウナギLHの生理作用の一端であると考えさらなる解析を急いでいる。現在組換えウナギLHを酵母およびほ乳類細胞発現系を用いて作製しているが今のところその生理活性が確認されるにはいたっていない。今後はウナギの細胞を用いてウナギLHを発現させることを考えておりそのための発現ベクターの構築が現在終了したところである。
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[Publications] Kamei H, Ohira T, Yoshiura Y, Uchida N, Nagasawa N, Aida K: "Expression of a biologically active recombinant follicle stimulating hormone of Japanese Eel Anguilla japonica using methylotropic yeast, Pichia pastoris."Gen Comp Endocrinol.. 134(3). 244-254 (2003)
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[Publications] Kamei H, Ohira T, Yoshiura Y, Uchida N, Aida K: "Androgen secretion activity of recombinant follicle-stimulating hormone of Japanese eel, Anguilla japonica in immature and maturing eel testes."Fish Physiol.Biochem.. in press. (2004)