2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属-典型金属複合反応系に関する理論及び実験研究
Project/Area Number |
02J08487
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉戒 直彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 反応機構 / 密度汎関数計算 / クロスカップリング反応 / 有機銅試薬 / 速度論的同位体効果 |
Research Abstract |
リチウムジメチルクプラート二量体([Me_2CuLi]_2)による臭化ビニルの求核置換反応の経路について,密度汎関数法(B3LYP/SDD(Cu),Ahlrichs SVP(Br),6-31G(d)(C,H,Li))を用いて検討した.クプラートとπ錯体の間の前平衡があり,π錯体から銅の求核攻撃および炭素-臭素結合の解裂が進行することが分かった.前平衡がクプラート側に大きく偏っていることは,実験的にπ錯体が観測されないことによって確認した.律速段階である炭素-臭素結合解裂には2通りの過程が存在することを見出した.1つはニッケルおよびパラジウム錯体の酸化的付加反応に関して提唱されている3中心の挿入型の経路であった.一方,もう1つの経路では銅の求核攻撃とともに臭化物イオンが脱離していき,銅と臭素の間には相互作用がないことが分かった.Kohn-Sham軌道解析および固有反応座標解析を行い,反応の駆動力および両者の経路の本質的な違いが銅の配位構造と密接に関わっていることを明らかにした.気相中での計算あるいは溶媒の極性,配位を考慮した計算のいずれにおいても脱離型の経路の方が挿入型よりも3〜4kcal/mol有利であった.実際に本反応が脱離型の経路で進行していることを,炭素の速度論的同位体効果によって検証した.すなわち,リチウムジメチルクプラートと1-ブロモシクロオクテンの反応を行ったところ,α位およびβ位の炭素についてそれぞれ2%強,2%弱の速度論的同位体効果が観測された.これらの値は,前述の理論計算に基づき脱離型の経路について算出した同位体効果の値と非常に良い一致を示した.以上をまとめると,有機銅アート試薬によるsp^2炭素上での反応機構を理論計算および実験を駆使することにより明らかにした.
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[Publications] E.Nakamura, N.Yoshikai, M.Yamanaka: "Mechanism of C-H Bond Activation/C-C Bond Formation Reaction between Diazo Compound and Alkane Catalyzed by Dirhodium Tetracarboxylate"J.Am.Chem.Soc.. 124. 7181-7192 (2002)