2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08515
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | サブバンド間遷移 / 量子井戸 / 電子ラマン散乱 / 多体効果 |
Research Abstract |
サブバンド間遷移における電子の多体効果及び緩和メカニズムの影響を明らかにするために,以下の研究を行った。 1.狭いGaAs系量子井戸におけるサブバンド間遷移を,赤外吸収及び電子ラマン散乱(非弾性光散乱)という2種類の方法で測定した。デポラリゼーションシフトと呼ばれる多体効果による遷移エネルギーの変化は,従来,(広い量子井戸に関する報告から)ラマン散乱の偏光依存性に現れると考えられてきたが,本実験では10meV以上のデポラリゼーションシフトが期待されるような高電子濃度にもかかわらず,有意な偏光依存性が観測されなかった。また,赤外吸収と平行偏光配置の電子ラマン散乱は同一の起源をもつと考えられているが,本実験では共鳴エネルギーと線幅が有意に異なることが確認された。井戸幅が狭くなると,一般に界面ラフネス等の影響により電子ラマンピークはブロードになるため観測が困難であり,狭いGaAs系単一量子井戸において電子ラマン散乱が観測されたこと自体も初めてである。これらの成果については,第7回量子井戸中サブバンド間遷移国際会議,及び日本物理学会2003年秋季大会にて発表を行った。 2.上記の実験結果には,界面ラフネスによる緩和やバンドの非放物線性など,狭い量子井戸において顕著となる効果が本質的な役割を果たしていると考えられる。そこで,遷移エネルギーが200meV以上となる上記の狭い量子井戸から,遷移エネルギーが50meV以下となる広い量子井戸まで,系統的に井戸幅を変化させた一連の量子井戸を作製して電子ラマン散乱の実験を行った。現在までのところ,遷移エネルギーが百数十meVとなる中間的な領域を境に,理論通りのデポラリゼーションシフトが現れなくなる傾向が見られている。この成果については,日本物理学会第59回年次大会にて発表する。本実験は来年度前半まで継続する予定である。
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