2004 Fiscal Year Annual Research Report
好熱性水素細菌の嫌気鉄呼吸による生育とその呼吸鎖に関する研究
Project/Area Number |
02J08531
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄呼吸 / 嫌気 / チトクロム / 独立栄養 / ヘム / acidianus / 鉄還元 / ポルフィリン |
Research Abstract |
今までに、pH1.2、80℃においてH_2を電子供与体、Fe^<3+>を電子受容体として独立栄養的に嫌気生育するAcidianus manzaensis NA-1株を単離した。本菌は鉄還元微生物として好熱性・好酸性を示す初めての例である。また、呼吸鎖末端酵素である鉄還元酵素Firを精製し、諸性質の解析をおこなった。以下、本年度の研究実績を報告する。 (1)ヘム構造解析 ピリジンフェロヘモクロム解析から、Firは新規ヘムを含むことが示唆された。そこで、ヘムの構造解析をおこなった。LC-MS/MSにより分子量および側鎖構造を推定した結果、分子量1008.5m/zを示すC_<59>H_4N_4O_7Feであることが示された。本分子量に合致するヘムは報告されておらず、新規ヘムであることが裏付けられた。MS/MS解析によりポルフィリン各側鎖がフラグメントとして検出され、ポルフィリン2位にhydroxyethylgeranylgeranyl基、8位に1,2-hydroxypropyl基を有することが明らかとなった。 (2)鉄還元のメカニズム A.manzaensisにおける鉄還元のメカニズムを解明するために、Firの局在性と配向性を解析した。嫌気鉄呼吸により生育した菌体をトリプシン及びV8プロテアーゼにより処理した結果、Firの内部アミノ酸配列に合致する2つの消化断片を得た。各ペプチダーゼ処理後の上清画分には精製FIRと同様な吸収スペクトルが確認された。また、消化後の菌体の鉄還元活性は処理前と比較して約1/3であった。さらに精製したFIRはpH1.5において30-80℃で安定に存在するが、pH7.0において70℃では容易に失活する。以上から、本菌においてFirが菌体膜表面に鉄還元活性中心(ヘム)を位置する形で鉄還元をおこなっていることが示唆された。
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