2003 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの体液調節におけるナトリウム利尿ペプチドの役割
Project/Area Number |
02J08548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚田 岳大 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / 浸透圧調節 / ウナギ / 飲水 / 生理学的手法 |
Research Abstract |
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、血漿Na^+濃度を減少させ、ウナギを海水へ適応させるホルモンである。これまでの研究により、ANPの血漿Na^+濃度減少作用は、飲水や腸からのNa^+摂取の抑制によるもので、鰓や腎臓からのNa^+排出の促進によるものではないことが明らかになった。しかし、これまで明らかにされてきたANPの生理作用は、外部からANPを投与することによって調べたものであり、実際に体内に存在する内因性ANPが海水適応に関与しているか否かは不明である。本年度は、ANPに特異的に結合する抗体をウナギに投与し、血液中に循環するANPの活性を抑え、内因性ANPの海水適応への作用を調べた。海水ウナギに抗体を投与すると、飲水量が徐々に増加し、アンジオテンシンII(ANGII)濃度も増加した。これまでANPは直接飲水を抑制することが知られていたが、ANGIIレベルを下げることによっても飲水を抑えられることが示唆された。次に、血液中のANPレベルが上昇するとともに飲水が一時的に抑制される海水移行時や、血液中のANPが急激に上昇して飲水が一時的に抑制される浸透圧刺激時に抗体を投与したが、飲水量、ANGII濃度、血漿Na^+濃度ともに対照群と変わらなかった。これらの刺激後、両群で飲水を促進するANGIIが増加するにもかかわらず飲水が抑えられるため、一過的に上昇するANPが飲水を抑えるとこれまで考えられていたが、血液中を循環するANPを抗体で不活性化しても飲水量が減少することから、ANP以外の因子がこれらの飲水抑制に関与していると考えられる。 以上の結果から、外因性、内因性ANPの作用が明らかになったため、今現在、ANP特異的受容体NPR-Aの発現部位を分子生物学的、免疫組織化学的手法を用いて同定している。脳内にNPR-Aの免疫陽性神経細胞が確認できたので、今後は局所的な脳の破壊や脳室内へのANP微量投与実験を行い、ANPの飲水への作用をより詳しく調べていきたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takehiro Tsukada, Yoshio Takei: "Physiological role of endogenous ANP evaluated by immunoneutralization"Zoological Science. 20:12. 1575 (2003)
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[Publications] Susumu Hyodo, Takehiro Tsukada, Yoshio Takei: "Effects of environmental salinity on synthesis and release of neurohypophysial hormones and C-type natriuretic peptide in dogfish, Triakis scyllia"Zoological Science. 20:12. 1599 (2003)