2002 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの体液調節におけるナトリウム利尿ペプチドの役割
Project/Area Number |
02J08548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚田 岳大 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / 浸透圧調節 / ウナギ / 飲水 / 生理学的手法 |
Research Abstract |
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、血漿Na^+濃度を減少させ、ウナギを海水へ適応させるホルモンである。これまでの研究により、ANPは海水に適応したウナギの飲水を抑制し、腸からのNa^+吸収を抑制することによって血漿Na^+濃度を減少させることが明らかとなった。しかし、魚類において最も重要な浸透圧調節器官である鰓におけるANPの作用は未だ明らかにされていない。本年度の実験は、鰓が全体表面積の90%以上を占め、水やイオンの透過性が他の体表と比べて著しく高いという特徴をいかして、体内外に投与した^<22>Naの動きから鰓におけるNa^+の流入、流出速度を調べ、今まで困難とされてきたin vivoにおける鯛のNa^+動態やANPの作用を明らかにした。鰓を介したNa^+の流入、流出の速度はともに^<22>Naを加えたのち4時間まで直線的に上昇し、10時間後にほぼ平衡に達していた。このようにNa^+の流入や流出の速度が、実験開始後4時間まで直線的であったため、その期間内にANPを連続投与し、生理食塩水の連続投与時と比べて、流入、流出の速度が変化するかどうかを調べた。しかし、ANPの連続投与による流入、流出速度の変化はみられなかった。 以上の結果から、ANPによる血漿Na^+濃度減少作用は、体外からのNa^+摂取の抑制によるもので、鰓からのNa^+排出の促進によるものではないことが明らかとなった。このように、個体レベルでのANPの血漿Na^+濃度減少作用の全貌が明らかとなったため、今後はANPの作用のあった各部位(飲水、腸)についてさらに詳しく調べていきたい。そのためにまず、ANP特異的受容体NPR-Aの発現部位を分子生物学的、免疫組織化学的手法を用いて同定していきたい。また今現在、内因性のANPの生理作用を調べるため、ANPの抗体を投与して血漿中のANP活性を抑える実験も行っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 竹井 祥郎: "高浸透圧環境への対応機構"月刊海洋. No29. 92-103 (2002)
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[Publications] 塚田 岳大: "^<22>Naを用いてウナギの優れた浸透圧調節機能を探る"東京大学アイソトープセンターニュース. 33巻,2号. 2-4 (2002)