2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの体液調節におけるナトリウム利尿ペプチドの役割
Project/Area Number |
02J08548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚田 岳大 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / 浸透圧調節 / ウナギ / 飲水 / 生理学 |
Research Abstract |
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、血漿Na^+濃度を減少させ、ウナギを海水へ適応させるホルモンである。これまでの実験により、ANPの血漿Na^+濃度減少作用は、飲水や腸からのNa^+摂取の抑制によるもので、鰓や腎臓からのNa^+排出の促進によるものでないことが明らかとなった。本年度は、ANPの飲水抑制機構に着目し、ANPの脳内作用部位を同定した。まず、脳を6つに分け各部位におけるANP受容体(NPR-A)の発現をRT-PCRで調べたところ、全ての部位でNPR-Aの発現がみられた。次に免疫染色法を用いてNPR-Aの脳内分布を詳しく調べた。その結果、脳全体の血管系にNPR-Aが局在し、RT-PCRの結果と一致した。また、NPR-A陽性の神経細胞は、延髄の網様体に存在する比較的大きな神経細胞や、飲水調節に関与している舌咽・迷走神経運動野ニューロン、哺乳類で嘔吐や血圧調節に関与している最後野の神経細胞にNPR-Aが局在していた。いっぽう、血液中のANPが飲水を抑制することから、ANPは血液脳関門を欠く脳室周囲器官群に作用していると考えられる。そこで、アルブミンに結合するため血液脳関門を通過できないトリパンブルーを血中に投与しところ、視索前核、および最後野や松果体などの脳室周囲器官にトリパンプルーの蛍光反応がみられた。NPR-Aが存在して血液脳関門を欠く部位が最後野のみであったことから、血中のANPが最後野に作用して飲水を抑制していることが示唆された。そこで、海水ウナギの最後野を破壊したところ、実験群は偽手術群と比べて飲水量が減少するとともに、血液中に投与したANPにより飲水量が抑制されなくなった。このことから、最後野が魚類の飲水調節、とりわけANPの飲水抑制作用に関与していることが示唆された。
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Research Products
(3 results)