2002 Fiscal Year Annual Research Report
11族遷移金属イオン間の弱い相互作用を駆動力とする階層的自己組織化による機能発現
Project/Area Number |
02J08638
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸村 顕広 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | デンドリマー / 金属間相互作用 / ピラゾール / ソフトマテリアル / 11族金属 / メモリー材料 / 発光材料 / ゲル化剤 |
Research Abstract |
現在、多彩な機能を期待できる分子モジュールとして、金属錯体を用いた新しい材料設計に注目が集まっている。特に、ナノマテリアルに関連して、『集積型金属錯体』の発展が目覚ましい。しかし、これらはクリスタルエンジニアリングとの関連から語られる場合が多く、結晶状態における議論がほとんどであった。一方、超分子化学の世界では、その成熟とともに、溶液状態などでの『集積体』構築が盛んに行われ、その具体的な応用が求められるようになってきた。本研究では、これら二つの分野で得られた知見を基に、金属錯体のソフトマテリアルへの新展開を目指した。特に、『11族遷移金属イオン間に働く弱い相互作用』に注目することにより、集積化と同時に、発光機能が発現するような材料を設計し、集積構造の制御により、発光機能のスイッチングができる材料を開発した。 本年度は、表面に様々な長さの長鎖アルキルを有するピラゾリルデンドリマー錯体を設計し、その熱的な相転移に伴う発光特性の変化について詳しく検討した。これらの錯体は、溶液ではなく、バルクの固体についてのみ、金属イオン間相互作用に特有の大きなストークスシフトを伴う発光が観測された。これは、錯体が固体状態でのみ集積体を形成していることを示唆している。大部分の銅錯体が、等方相への転移に伴って発光波長が長波長シフトするという、発光のサーモクロミズム(黄色→赤色)を示した。興味深いことに、一部の錯体については、ある条件の下で固体(室温)においても長波長側の発光が記憶されることがわかり、メモリー材料へ応用可能であることを見出した(特許出願中)。この記憶特性は、デンドロンの世代や、アルキル鎖長に応じて変化することから、集積構造の微妙な変化に対応して、発光特性が変化していることが分かった。 また、上記の系の延長として、熱に応答して発光のON/OFF制御が可能な有機ゲル化剤を開発した。
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