2002 Fiscal Year Annual Research Report
小脳長期抑圧の誘発を担うイノシトール1,4,5-三リン酸動態の可視化解析
Project/Area Number |
02J08643
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 洋平 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小脳 / 長期抑圧 / イノシトール / カルシウム / 可視化 / 二光子励起顕微鏡 / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
小脳平行線維-プルキンエ細胞間シナプスの長期抑圧は、中枢神経におけるシナプス可塑性理解のための比較的単純なモデル系として活発に研究が進められているが、その誘発メカニズムはいまだに明らかになっていない。研究代表者は長期抑圧誘発における重要性が示唆されているイノシトール1,4,5-三リン酸(IP_3)に着目した。そしてこれまでに、蛍光IP_3プローブであるGFP-PHDを用いることで、培養プルキンエ細胞でのIP_3可視化に成功した。本研究では長期抑圧誘発におけるIP_3の役割を、時間的・空間的コンテクストにおいて明らかにすることを目的とする。 上記目的を達成するためには、急性小脳スライス標本内のプルキンエ細胞においてGFP-PHDを発現させる技術が必須であり、まずその開発に着手した。GFP-PHDをコードしたシンドビスウイルスベクターを小脳に注入、感染・発現を待ち小脳スライスを作製することで、急性小脳スライス標本内にGFP-PHD発現プルキンエ細胞を得ることができた。シンドビスウイルスベクターを用いた理由としては感染効率、発現効率、取り扱いの容易さが挙げられる。 次に、脳スライスのように厚く、光散乱の大きい標本での蛍光観察に有利な二光子励起顕微鏡を構築し、フィルターセット及びミラー系の構成、仕様をGFPおよびカルシウム蛍光指示薬の蛍光観察に最適化した。これによりプルキンエ細胞樹状細部でのGFP-PHDの動きを観察することに成功した。そしてこの技術を用い、平行線維入力依存的なIP_3産生及びカルシウムシグナルを同時測定することに成功した。平行線維依存性のIP_3動態の解析は、本研究の目的達成のためには必須の成果であり、今後の研究の進展が期待される。 また、以上の成果を北米神経科学学会年会にて発表した。
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