2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08657
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中條 美和 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地方政治 / 政治過程 / 政治参加 |
Research Abstract |
カーチスらによる従来の知見によれば、日本における地方レベルの政治では、国会議員を頂点とした系列地方議員の利益依存関係が明らかにされている。本研究の大きな目的は、現代の地方レベルにおける政治過程を明らかにすることにあり、平成15年度熊本県において知事を中心とした政治過程の観察を行った。 対象とした熊本県では、平成12年に民間出身の女性知事が誕生、リベラルな政策が広く県民に支持され、平成16年に実質的信任投票で再選される運びとなった。先行研究における典型的な政治風土である熊本県において、このようなリベラルな女性知事が支持されている要因は以下のようにまとめられる。 政党の組織力低下と同時に、個々人のゆるやかなネットワークによる政治参加の台頭という日本政治全体の背景の中で、熊本県知事に関しては以下4つの特徴があげられる。第一に、民間出身の知事であるゆえに政党や官庁と深い利害をもたず、政党から独立した市民団体やネットワークによる支持を得やすい。第二に、緊縮財政かつ福祉政策拡充という新しい政治リーダー的な政策をうちだしており、リベラル派の支持を得ている。第三に、完全に政党を否定せず、議会多数派の保守政党の推薦を得ているために、政党と関係する団体の支持があること。第四に、女性であることから、女性団体の活発な活動による支持を得ている。ただし、女性団体は「女性票」という一括りではなく、上記の第一から第三までの支持に分けることができる。 一方、彼女が知事であることの効果として、彼女を支持する段階において、既存団体によらない住民個々がもつネットワークによる参加が促進されていることが挙げられる。 今後はこれらの知見をもとに、計量的な検証も併用しつつ、研究成果をまとめる予定である。
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