2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機ハイブリッド材料の電子構造解析と光・放射線化学的挙動の解明
Project/Area Number |
02J08674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シンチレータ / 励起子発光 / 量子閉じ込め効果 / 電離放射線計測 / 低次元半導体材料 / 量子井戸 / 核医学 / PET装置 |
Research Abstract |
シンチレータは放射線計測に用いられる一種の発光型センサー材料で、電離放射線のエネルギーを吸収して光に変換する機能を持つ物質である。近年、癌などの診断に用いられる最新の核医学装置であるPET(陽電子断層映像装置)の高性能化のため、より高い時間分解能を有するシンチレータ材料の開発が強く望まれている。 本研究では、半導体の励起子発光がサブナノ秒の減衰時定数を持つ極めて高速な蛍光現象であることに着目し、半導体をシンチレータとして用いるための実験を進めてきた。従来の半導体材料では、極低温においては高い量子効率で励起子発光が観測されるものの、室温付近では十分な蛍光強度が得られず実用化が困難であった。これに対して、半導体材料を低次元化することにより、励起子の束縛エネルギーが増大する量子閉じ込め効果により発光バンドを熱的に安定化させ、かつ、励起子の自由な熱拡散を制限する量子閉じ込め構造によって無輻射遷移を抑制することによって、半導体励起子の高速な輻射緩和という特長を失うことなく高い蛍光強度と両立することができた。 量子効果を発現させることによって、従来のデバイスを超越した性能を実現する技術はナノ・テクノロジーと総称されるが、本研究は世界ではじめてシンチレータにナノ・テクノロジーを適用した先駆的な実施例であり、本研究代表者による総論が平成17年10月にアメリカン・サイエンティフィック・パブリッシャーズ社から刊行される「エンサイクロペディア・オブ・センサーズ」(辞典)に収録されるなど、既に海外の専門家からも新しい概念の高性能シンチレータとして認識されはじめている。 原理的な実証はほぼ終えたものと考えられるので、今後はPETに搭載するなど、より実用化に近い段階での実験を継続することとなる。
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Research Products
(4 results)