2003 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機ハイブリッド材料の電子構造解析と光・放射線化学的挙動の解明
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02J08674
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シンチレータ / 励起子発光 / 量子閉じ込め効果 / 電離放射線計測 / 低次元半導体材料 / サーマルクエンチング / 有機無機ハイブリッド化合物 / 核医学診断装置 |
Research Abstract |
シンチレータは放射線計測に用いられる一種の発光材料で、電離放射線のエネルギーを吸収して光に変換する機能を持つ物質のことである。放射線がシンチレータに入射すると電子励起状態が生じ、ある寿命で基底状態に緩和する際に光子が放出される。この時定数が短いほど、シンチレータの時間分解能は勝れている。近年、核医学などの先端の放射線計測現場において、この時定数が数ナノ秒以下である超高速シンチレータが強く求められている。 本研究では、半導体の励起子発光がサブナノ秒の時定数を持つことに注目し、半導体をシンチレータとして用いるための実験を進めている。励起子準位は熱的に不安定なため、室温で半導体に放射線を照射してもほとんど発光しないというのが通念であったが、有機無機ハイブリッド材料を用いて半導体を低次元化し、励起子の束縛エネルギーを増大させることにより、室温でも半導体シンチレータが効率的に発光することが実証できた。その成果は、Applied Physics Letter誌から間もなく出版される(印刷中)。 また昨年行った実験から、室温での当該発光にもサブナノ秒の超高速成分が含まれることが明らかとなっていたが、本年は放射線を励起源として超高速発光を観測・評価するための、時間分解発光測定システムの構築にも尽力した。具体的には、電子LINAC(線形加速器)から発生するパルス電子線を励起源とし、放射線誘起発光をストリークカメラとMCP内蔵の高速光電子増倍管で測定する。二つの受光器のうち、前者は主に1ナノ秒以下の成分を測定し、後者は1ナノ秒以上の成分を測定するのに適している。 また、試料は特性の真空チェンバー内に設置することにより、チェレンコフ光という試料によらない発光の混入を防止し、また圧縮ヘリウムガス循環型の冷凍機と接続して試料の温度を変化できるように改造した。 そのような測定系を構築することによって、超高速シンチレータのタイムプロファイルをより正確に測定し、なおかつ励起子と格子(フォノン)の相互作用などの基礎的な物理に関する情報も得られるようになったので、基礎と応用の両面からシンチレータ開発を更に促進する環境が整った。 本成果に関しては、3月中旬の電気学会全国大会のシンポジウム『原子力総合安全、放射線計測、そして核融合プラズマを知る・操る技術について』における依頼講演で、包括的に発表する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Shibuy, M.Koshimizu, K.Asai, H.Shibata: "Quantum confinement for large light output from pure semiconducting scintillators"Appl.Phys.Lett./American Institute of Physics. in press. (2004)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Measurement of the local temperature in an ion track using low-dimensional quantum confinement structure"Radiat.Phys.Chem./Elsevier Science. 66. 35-38 (2003)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Observation of local heating in an ion track by measuring the ion-induced luminescence spectrum"Nucl.Instrum. & Methods B / Elsevier Science. 206. 57-60 (2003)
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[Publications] 澁谷憲悟, 越水正典, 浅井圭介, 柴田裕美: "有機無機層状ペロブスカイト型化合物のイオン誘起発光"(紀要)東京大学原子力研究総合センターニュースISSN:0916-152X.
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[Publications] 澁谷憲悟, 室屋裕佐, 越水正典, 浅井圭介: "量子シンチレータによる高時間分解能放射線計測"(発表会・招待講演)電気学会全国大会シンポジウム. 7-12S-9 (2004)