2004 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理・分子動力学計算による立方晶窒化ホウ素薄膜形成機構の研究
Project/Area Number |
02J08677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古賀 裕明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 立方晶窒化ホウ素 / 第一原理計算 / 薄膜 / エピタキシー / ワイドギャップ半導体 / 吸着構造 / 表面反応 / 表面拡散 |
Research Abstract |
本研究では、次世代のワイドギャップ半導体材料として期待されている立方晶窒化ホウ素(cBN)の新しいエピタキシャル成長法を提案し、その実現可能性を非経験的電子状態計算(第一原理計算)により明らかにした。従来のcBN薄膜成長法では、高温相(sp^2相)の成長を押さえるためイオン照射が用いられている。しかしこの方法は照射損傷のため電子デバイス作成には適さない可能性がある。そこで、イオン照射を用いない方法として、次のような蒸着法を提案した。BNのB原子層が成長している間はBのみ供給し、窒素原子層が成長している間は窒素のみ供給する。(このような成長法は一般に拡散促進エピタキシー(MEE)として知られている。)この場合、表面上の吸着原子は一種類なので、B・Nの会合によるsp^2相の形成を押さえることができ、イオン照射を必要としない。この蒸着法が実現するためには、表面拡散のエネルギーバリアが小さく、吸着原子が速やかにcBNの正しい格子位置に到達できなければならない。そこで本研究では、拡散のエネルギーバリアを第一原理的に計算した。その結果、B層上B原子の拡散バリアは約0.8eV、N層上N原子の拡散バリアは約0.9eV以下であることがわかった。これは基板温度700Kで毎秒10^6格子サイト以上の拡散面積に相当し、欠損サイトの濃度がこれ以上の場合、各吸着原子が正しい格子サイトに到達できることを示している。したがって、MEE法によるcBN成長が実現する可能性が高いと結論できる。本研究ではさらに、ダイヤモンド(001)基板上でのcBN-MEE成長の可能性について、第一原理計算に基づいて示した。以上の結果から、cBN-MEE法の開発がワイドギャップ電子デバイス実現に大きく貢献すると考えられる。
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Research Products
(2 results)