2003 Fiscal Year Annual Research Report
数理モデルを用いた人工遺伝子ネットワークの解析と設計・医療への応用に関する研究
Project/Area Number |
02J08703
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 徹也 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遺伝子ネットワーク / 揺らぎ / 確率性 / 人工遺伝子ネットワーク / 力学系 |
Research Abstract |
細胞内においては、mRNAなどの個数が少ないことから、遺伝子発現において揺らぎが必然的に生じる。この揺らぎは遺伝子ネットワークの挙動を大きく変えうるほどの影響を持つ。ネットワークの正確な挙動予測と信頼性の高い設計方法の確立に向け、本年度は揺らぎを取り入れた数理モデルの提案をし、揺らぎが遺伝子ネットワークに及ぼす影響を解析するための新しい数理的な手法の開発を行った。 まず、揺らぎを含む遺伝子発現の動的特性を記述するキュムラント発展方程式を構成し、その方程式から得られる数値計算結果を直感的に理解する手法として、確率ネットワーク解析の手法を提案した。また、遺伝子ネットワークにおいて揺らぎがどのように生成し、それがネットワーク内を伝播するのかをこの手法に基づいて定義・記述した。さらに、これまでいくつか提案されている遺伝子発現の揺らぎにかかわるパラメータやネットワーク構造の背後に存在する一般的なメカニズムを本手法に基づいて分類し、それらの本質的な機能が確率ネットワーク解析の方法により統一的に理解できることを示した。一方、遺伝子発現の揺らぎを解析的に調べることが可能な線形ノイズ近似に基づく手法を用いて、遺伝子発現における揺らぎの影響を別の側面からも評価した。これらの結果については、ICSB2003、CEC2003などの国際会議において発表をし、現在原著論文の準備中である。また、本年度の研究結果を一部含む遺伝子ネットワークの揺らぎに関する総説論文が雑誌数理科学に採用されている。 さらに、これらの研究の人工遺伝子ネットワークへの応用として、遺伝子ネットワークの構造の違いが揺らぎに与える影響を実験的に調べる方法を提案し、現在実験的検証の準備を行っている。 また、第1回システムバイオロジー研究会において、人工遺伝子ネットワーク研究の現状と今後の進展についての招待講演を行った。
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[Publications] 冨岡亮太, 小林徹也, 合原一幸, 木村英紀: "遺伝子発現の揺らぎの確率・ネットワーク解析 ロバストな遺伝子ネットワークの設計原理を目指して"数理科学. 489. 31-37 (2004)