2003 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原性細菌による宿主細胞傷害機構の分子細胞生物学的解析
Project/Area Number |
02J08749
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋本 貴代 (馬場 貴代) 九州大学, 大学院・歯学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | Porphyromonas gingivalis / gingipains / 歯周病 |
Research Abstract |
成人性歯周炎において主要な病原性細菌であるPorphyromonas gingivalis (P.gingivalis)と全身疾患との関連性について、疾患モデル動物の作成および解析を行い、本菌から産生される2種類のシステインプロテアーゼArg-gingipain (Rgp)とLys-gingipain (Kgp)の役割について検討した。 まず、P.gingivalisの感染による全身性の炎症反応について調べるために、マウスの背部皮下に菌体を注射し、腹部に潰瘍形成を起こすようなモデルを用いた。野生株のP.gingivalis ATCC33277株では、注射の2〜3日後にすべてのマウスの腹部に潰瘍形成が認められたが、RgpおよびKgp遺伝子欠損株では潰瘍形成が認められなかった。また、RgpおよびKgpの特異的阻害剤を作用させることによっても潰瘍形成は抑制された。このことから、Rgp、Kgpの両酵素が、全身性の炎症反応の波及・増悪に直接的または間接的に作用していると考えられた。 さらに、P.gingivalisの感染と粥状動脈硬化症との関連を調べるために、動脈硬化を発症するApolipoprotein E欠損マウスを用いて解析を行った。P.gingivalis ATCC33277株を週1回尾静脈内注射して、血清中の総コレステロール値、HDL-コレステロール値、およびLDL-コレステロール値を測定したところ、総コレステロール値では、PBSを注射したコントロール群と本菌を注射した群では有意な差が認められなかった(2030±78 vs 2089±185)が、HDL-コレステロール値とLDL-コレステロール値では、いずれも著明な差が認められた(HDL-コレステロール値;276±32 vs 184±27mg/dl、LDL-コレステロール値;1129±121 vs 1828±92mg/dl)。このことから、本菌の感染により、動脈硬化の発症率が高くなる可能性が示唆された。 次年度では、P.gingivalisの感染と動脈硬化症の発症メカニズムについて、マクロファージなどの培養細胞を用いて解析するとともに、脂質の代謝におけるRgpとKgpの作用についても検討する予定である。
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