2002 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミズムを付加した光重合材料による光機能性ナノデバイスの開発
Project/Area Number |
02J08785
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
庄司 暁 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 3次元光微細加工 / フォトクロミズム / フォトニック結晶 / 光硬化性樹脂 / 非線形光学 / 2光子吸収 |
Research Abstract |
ラジカル重合反応に基づく光硬化性樹脂(KC1077;JSR株式会社製)にジアリールエテン系フォトクロミック色素を混入させ、フォトクロミズムの性質を持った光硬化性樹脂の作製を行った。光重合前の樹脂にフォトクロミック色素を添加し、暗室内においてマグネットスターラーで約12時間混合したあと、20nmメンブレンフィルターに通して粉状あるいは結晶状で団粒となったフォトクロミック色素を取り除き材料を得た。一般的に光硬化性樹脂もフォトクロミック色素も共に紫外線〜青色光に吸収を持ち、それぞれ光重合反応あるいはフォトクロミック反応を起こす。従って、通常の光加工のように紫外線を照射するとフォトクロミック反応にエネルギーを奪われ効果的に光重合反応を誘起することができない。そのためフォトクロミック色素を混入した光硬化性樹脂を用いて光微細加工をする際に最も重要なキーとなるのは、光硬化性樹脂には吸収がありフォトクロミック色素には吸収がない波長域が存在するように、光硬化性樹脂とフォトクロミック色素を選択しなければならない。実験では添加する色素として、青色光(400〜500nm)の波長域に吸収を持たないフォトクロミック色素を合成した。(この色素は紫外線照射によって青色着色し、赤色光照射によって無色に戻る。)光造形にはHe-Cdレーザー(波長441.6nm)を光源として用い、フォトクロミック反応を誘起することなく効果的に光重合反応を起こすことに成功した。 He-Cdレーザー光を4光束に分割し上記の光硬化性樹脂中で干渉させ、正方格子2次元フォトニック結晶構造を作製した。レーザー光の入射角を選択することで、10m、3m、1mの格子間隔のフォトニック結晶構造を作製した。紫外線の照射によってフォトニック結晶の青色着色を確認し、赤色光(He-Neレーザー:632.8nm)の照射によって無色に戻ることを確認した。このことは上記の光硬化性樹脂にフォトクロミズムの性質を付加することに成功したことを意味している。 フォトクロミズム付加による非線形効果を調べるため、上記の光硬化性樹脂を用いて薄膜を作製しエリプソメーターで樹脂の屈折率測定を行った。無色状態と着色状態とでの屈折率の変化を測定したが、屈折率変化量が少なすぎて計測することができなかった。フォトクロミック反応で屈折率変化を誘起するためにはさらに高濃度のフォトクロミック色素を混入する必要がある。 4光束の干渉の2度の照射によってウッドパイル型3次元フォトニック結晶の作製を行った。ガラスセル中に満たした光硬化性樹脂中に、一度はセルの下方から、2度目はセルの側方から4光束を入射干渉させ正方格子ロッドアレイを2方向から作製し組み合わせることで、3次元的にいずれの方角にもおおよそ50層程度の総数を持つ3次元フォトニック結晶を作製した。電子顕微鏡を用いて作製したフォトニック結晶の観察を行った。
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