2002 Fiscal Year Annual Research Report
エリザベス朝からヴィクトリア朝における文学市場の発達と文学者の地位・役割の変遷
Project/Area Number |
02J08830
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園田 暁子 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 著作権 / 文学市場 / パトロネージ / 文筆家の天職意識 / S.T.コールリッジ / ジャーナリズム |
Research Abstract |
本年度は、16世紀から19世紀にいたるまでの文学者の主たる経済基盤や出版を取り巻く状況の変化、パトロネージのあり方、文学者の自らが果たすべき社会的役割についての意識の変遷をたどり、その変化の特質や背景を考察することを目的として研究を進めた。 8月19日から30日までの12日間に連合王国のロンドンで行った資料収集では、大英図書館でパトロネージに関する文献、出版者や文人の回想録、1790年代の地方新聞などを閲覧・複写した。英国上院公文書館では、18世紀から19世紀にかけての政府による文筆家に対する年金、著作権法、1790年代の英国政府による言論統制に関する法令とそれらの法制定にいたるまでの国会での議事録を入手した。 また、16世紀から19世紀にかけての出版業の発展、文学者の自らの作品に対する権利意識、自らの社会的役割についての意識の変化などを調査するために、関連文献を計23点(洋書21点、和書2点)購入した。 これらの資料を基に研究した結果、出版業の成長のために18世紀の終わりには姿を消していったと一般に考えられているパトロネージが、主に貴族によるものから、政府や民間の団体、富裕な中産階級によるものへと姿を変えながら実は存在し続けたことを確認した。また1790年代の英国政府による言論統制の動きとそれに対抗しようとした文筆家たちの試みについて考察し、その一部を10月12日、13日に北九州市立大学で行われたイギリス・ロマン派学会の第28回全国大会において「『ウォッチマン』とコールリッジの読者観」というタイトルで、研究発表を行った。 今年度内に発行される雑誌への投稿の締め切りが9月末と10月10日でイギリスでの文献調査後1か月程度の期間しかなかったため、特別研究員奨励費を利用して行った研究で得られた成果を投稿することができなかった。しかし、現在はすでにロマン派学会での発表に加筆修正した論文、ロマン主義の時代の著作権の取り扱いについての論文の2つが投稿できる状態になっているので、海外の雑誌も含めて投稿していきたいと考えている。
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