2003 Fiscal Year Annual Research Report
エリザベス朝からヴィクトリア朝における文学市場の発達と文学者の地位・役割の変遷
Project/Area Number |
02J08830
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
園田 暁子 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | コールリッジ / 著作権 / ジャーナリズム / パトロネージ |
Research Abstract |
今年度は、文学作品に対する著作権のあり方の変遷と文学者の自らの作品に対する権利意識の移り変わり、文筆家の果たすべき社会的役割についての考え方の変遷と文学市場の発達との関連についての研究を行った。これらの研究のために必要な一次資料と批評書(洋書16点と和書1点)を購入し、7月31日から14日間で、ローマのキーツ・シェリー博物館、シュネーブの国際知的所有権機構、ロンドンの大英図書館と英国上院公文書館での文献調査を行った。 著作権法の変遷については、18世紀初めから19世紀前半にかけての英国内での著作権法改定と、その背景にある社会における動き、意識の変化についての研究を進めることに加え、1886年に採択された最初の国際著作権法であるベルン条約締結にいたるまでの過程にディケンズをはじめとする英国の文学者が果たした役割を再評価することを目的に研究を行った。この研究に必要な主な資料は、ジュネーブの国際知的所有権機構とロンドンの英国上院公文書館で収集した。上述の研究の成果の一部は、2004年5月に大阪大学で行われる日本英文学会の全国大会で「S.T.コールリッジと著作権の問題」というタイトルで発表する予定である。この発表では、コールリッジと同時代のワーズワース、サウジーらの文筆家との著作権についての考え方の違いに着目し、この違いは社会・文化における文学作品の役割についての彼らの認識の違いによるものだと論じる。また、ディケンズと著作権の問題についての論文も執筆中で、来年度中に学術雑誌に投稿予定である。 2点目の、文字市場の発達と文筆家や読者の意識の変遷について考察するために、ジャーナリズムと文筆家のかかわりに着目して研究を行った。アディソン、スティールに始まりサミュエル・ジョンソン、コールリッジ、ロバート・サウジー、ウィリアム・コベット、ディケンズにいたるまでの文筆家とジャーナリズムとの関わりと彼らのジャーナリズム観を把握しつつ、特にロマン主義の時代の文筆家とジャーナリズムの関係の特質を明らかにすることを目指して研究を行った。この成果は、裏面にあげている『イギリス・ロマン派研究』と『九州英文学研究』において発表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Akiko Sonoda: "Coleridge and Journalism"イギリス・ロマン派研究. 28号. 39-49 (2004)
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[Publications] Akiko Sonoda: "For Whom Did Coleridge Write?:The Watchman and its Readers"九州英文学研究. 21号. 1-15 (2004)
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[Publications] Akiko Sonoda: "Coleridge's Concern with Posterity and His Contemporary Audience"九大英文学. 46号. 33-45 (2003)