2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08837
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
緒方 知美 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 平安時代 / 経典見返絵 / 法華経 / 風景表現 / 説話画 / やまと絵 / 写経 |
Research Abstract |
下記(11)から(22)の経典の((1)〜(10)は平成14年度)実地調査を行い、法量の計測、表紙見返絵の表現・書体・材質の観察とあわせて、35ミリカラースライドによる写真撮影を行い、作品のデータと資料を収集した。 (11)興聖寺蔵紺紙金字法華経并開結(12世紀、以下の無表記作品はこの時代)、(12)奈良国立博物館蔵一宇宝塔法華経、(13)奈良国立博物館蔵紺紙金字法華経巻第七、(14)醍醐寺蔵紺紙金字般若波羅蜜多経随喜品(11世紀)(15)常徳寺蔵紺紙金字法華経巻第二、四、五、(16)妙蓮寺蔵紺紙金字法華経并開結、(17)延暦寺所蔵銀字法華経(9世紀)、(18)延暦寺所蔵金銀交書法華経并開結(11世紀)、(19)金勝寺所蔵紺紙金字金光明経巻第一(9世紀ヵ)、(20)永源寺所蔵紺紙金字大般若経(21)永源寺所蔵白紙金寺華厳経(高麗時代)、(22)神光院蔵紫紙銀字般若波羅蜜多心経(11世紀) 調査の結果として、同時代の作品の見返絵・書体に大きな違いが認められることが確認できた。9世紀の(17)の銀字本は、見返絵を勁細な描線で詳細に描き、本文は小さめの謹厳な書体で書かれるが、(19)の金勝寺本は見返絵の描線は太く、書体は堂々としていて奈良風。11世紀の(14)(18)(22)の書体は温雅な和様の書体であり、(22)はとくに丹念で12世紀の写経体とは異なる。12世紀になると見返絵が多様化し、定型の正面構図を基礎に変化を加えるのもの((11)(13)(16)(20))、宋版本の斜め構図を写したもの、細密画風のもの((15))がある。見返絵と書体の多様化は、奈良時代の官営工房による制作から平安時代の多様な作者への変化を証明すると考えられる。平成16年度はさらに作品調査を継続し、あわせて史料による経典制作の実体把握に努め、平安時代の紺紙金字経見返絵全体の大きな流れを確認したい。
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Research Products
(1 results)