2004 Fiscal Year Annual Research Report
空間生態学の展開:熱帯林の土地利用動態の解析と将来予測
Project/Area Number |
02J08863
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐竹 暁子 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 土地利用 / 意思決定機構 / 現価値 / 長期的視野 / 再生スピード / 放棄林 / マルコフモデル / 空間時系列データ |
Research Abstract |
昨年度に作成した土地利用のマルコフモデルを発展させ、より詳細な解析を行った。土地利用モデルでは、2次元空間上にメッシュ状に分割された土地のそれぞれが、自然林、人工林、放棄林等の土地利用状態で記述されると想定し、将来の土地利用状態は土地所有者の意思決定に左右されると仮定している。土地所有者は、各土地利用状態に期待される現価値を推定し、現価値の大きい土地利用状態をより実現しやすいと仮定する。現価値とは、土地利用から得られる現在の経済的利益と、将来に受けるであろう利益の両方を含んでいる。土地所有者が短期的視野を備えている場合には、社会的に自然林が最も望ましい状態と考えられていても、人工林が土地空間全体を占めてしまう場合があることが理論的に示された。この結果は特に、人口林を放棄した後、放棄林から得られる経済的利得が非常に低く、放棄林が自然林に再生するスピードがゆるやかな場合に起こりうる。そういった悪循環を打開するためには、(1)放棄後の土地の価値を高めるためのなんらかの組織的施策(補償金の配布など)、(2)土地所有者の長期的視野、(3)放棄林の再生スピードを速める管理努力の三点が必要であることが示唆された。また、モデルの結果をもとに、屋久島で40年間にわたり観測された土地利用の空間時系列データを解析し、針葉樹林、広葉樹林、果樹園の経済的価値を推定した。現在この結果を論文にとりまとめ、Landscape Ecologyに投稿中である。
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Research Products
(3 results)