2004 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いた味覚受容機構の神経生物学的解析
Project/Area Number |
02J08874
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石元 広志 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ショウジョウバエ / 味覚 / 神経 / 行動 / シグナルトランスダクション |
Research Abstract |
味覚受容機構に関与するシグナルトランスダクション経路を担う分子の同定は未知な部分が大きい。ショウジョウバエゲノムにコードされる全Gタンパク質をRT-PCR法を用いて発現を調べた結果、Gγ1遺伝子が味覚組織で発現していた。Gγ1遺伝子のpromoter領域下流にP [GAL4]エレメントが挿入した系統をUAS-GFP系統と交配すると、GFPの蛍光を指標にしてGγ1遺伝子の発現部位を調べることができる。観察の結果、ショウジョウバエの味覚器である唇弁およびフ節の味細胞でGFPの蛍光が観察された。このGal4系統のGγ1遺伝子発現量を定量的RT-PCRで調べたところ、野生型と比較して1/10の転写量に減少していた。 Gal4系統で標識された味細胞が、糖、塩、水のどの味質に対応するのかを明らかにするために、上記Gal4系統を用いて神経活動を阻害する遺伝子を発現させた。その結果、糖に対する応答が低下しており、塩、水に対する応答は野生型と変わらなかった。また、Gγ1遺伝子に対するdsRNAをUAS-RNAi系統を用いて発現させ、味覚神経応答を電気生理学的に解析した。この結果、糖に対する神経応答が有意に低下していたことから、Gγ1遺伝子が、糖の味覚受容シグナルトランスダクションに関与すると考えられた。Gγ1のnull変異体の個体は致死となる。そのため、フリップアウト法とヒートショックプロモーターを利用した熱誘導性の体細胞組換え法を用いて、唇弁味細胞にて部分的にGγ1のnull変異を生じさせた。電気生理学的に味覚応答を調べたところ、ショ糖に対する神経応答が低下していた。この結果から、ショウジョウバエの糖味覚受容にはGγ1遺伝子が必要であることが示せたと同時に、Gタンパク質を用いない味覚受容シグナルトランスダクション経路があることが示唆された。
|