2003 Fiscal Year Annual Research Report
韓国社会教育発達過程に関する歴史的検討-民衆の教育活動との関連を踏まえて-
Project/Area Number |
02J08949
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 満 九州大学, 人間環境学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 植民地 / 朝鮮 / 社会教育 / 夜学 / 識字教育 |
Research Abstract |
平成14年度は、朝鮮植民地期における社会教育の発達過程を分析する上で、朝鮮民衆の学習・教育活動、特に朝鮮民衆による文盲退治運動(識字教育活動)に着目しながら研究を続けてきた。そして平成15年度では、より具体的な朝鮮民衆による学習・教育活動を組織した「朝鮮農民社」について歴史的実証研究を行った。この「朝鮮農民社」に関する歴史的な史料である雑誌『朝鮮農民』は、すべてハングルで記述されたものであり、韓国国会図書館および韓国の東国大学の図書館に所蔵されていた。この『朝鮮農民』は朝鮮総督府によって厳しく検閲されていたため、黒塗りされている部分も多く、さらには廃刊となっているものもあったが、当時の朝鮮民衆が朝鮮総督府の厳しい検閲をうけながらも朝鮮民衆の生活問題を取り上げ、現体制に対する批判的な能力の獲得や、自分の置かれている社会的な立場に対する認識を深めることを目的とした学習・教育活動を実施していたことが窺えるという貴重な史料であった。特にこの『朝鮮農民』には、朝鮮農民たちに対する啓蒙運動としてハングル習得を目指した教科書『農民読本』が特集として掲載されており、教科書の題材として「自由」「平等」「自立」等の内容を取り扱っている点で非常に特徴的であった。それは、文字を解せないために支配構造のなかで、不利益を被ってきたことを朝鮮民衆たちに自覚させながら、自ら主体的に考える農民を育てようとするものあった。これらの研究成果は、社会文化学会紀要論文「朝鮮植民地における文化支配への抵抗運動に関する歴史的検討-1920年代の朝鮮農民社による「文盲退治運動」(文解教育運動)を中心に-」としてまとめられている。これらの研究を通して、朝鮮植民地期において、支配と被支配、同化と差別、統合と自立という矛盾につつまれながら力強く生きる朝鮮民衆の生活の現実を明らかにする必要性、すなわち支配と抵抗の混在領域における地域の学習・教育活動について分析するという新たなパラダイムによる研究課題を導き出した。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 金子 満: "校区公民館主事の社会教育実践論-田岡鎮男社会教育実践論の考察-"社会教育思想研究. 2. 57-65 (2003)
-
[Publications] 金子 満: "公民館とNPOとの関係に関わる諸問題の考察-福岡の事例を中心にして-"九州教育学会研究紀要. 30. 109-115 (2003)
-
[Publications] 金子 満: "朝鮮植民地における文化支配への抵抗運動に関する歴史的検討-1920年代の朝鮮農民社による「文盲退治運動」(文解教育運動)を中心に-"社会文化研究. 6. 75-87 (2003)
-
[Publications] 金子 満, 肥後耕生, 小林平造: "韓国・平生教育法成立後の平生教育行政の実相(その3)"東アジア社会教育研究. 8. 11-42 (2003)