2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09024
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鐘ヶ江 賢二 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 弥生土器 / 発色技術 / 胎土分析 / 分光測色計 / 色調の計量的分析 |
Research Abstract |
本年度は、弥生土器の発色技術の文化的特質についての課題をまとめる最終年度となるため、技術的な特質を明らかにするための胎土分析と、土器の色に関する議論をすすめる際の理論や方法論の整理を軸に研究を進めた。そこで昨年に引き続き分析資料の収集と蛍光X線分析および岩石学的分析を実施し、また理論面を含めて成果を公表できた。 論文投稿では、青木書店より出版された『認知考古学とは何か』の中で、土器の発色のメカニズムについて検討を行い、土器の色は製作者の意図だけでなく、自然環境を含めた制約の中も含めた製作者の認知体系によって決定されるものであることを示した(「色調変化からみた九州弥生土器の地域色」『認知考古学とは何か』青木書店)。さらに弥生土器だけではなく、朝鮮半島の土器の発色技術についても分析をすすめており、朝鮮半島系土器の発色技術について論じた(「前原西町遺跡出土韓半島系土器の胎土分折」『前原西町遺跡』II)。 学会発表では、昨年の日本考古学協会第69回総会において、土器の色調変化を把握する際に測色計を用いた計量的分析と胎土分析を組み合わせることが有効性をもつこと、色に対する製作者の意義付けのために、土器の色調をある程度コントロールした可能性を提示した(「弥生土器・韓半島系土器の胎土分析からみた発色技術の検討」日本考古学協会第69回総会)。さらに九州史学会では、長崎県原の辻遺跡など壱岐の土器と、対岸の糸島の土器の胎土を比較し、土器交流や製作技術を把握する際の胎土分析の有効性を示した(「壱岐・糸島地域出土土器の胎土分折からみた弥生時代中期の土器生産と交流について」九州史学会)。 科学研究費の用途としては、以上の調査研究を行うための備品や、移動費に大きなウェートが占められた。特に朝鮮半島の土器の発色技術と日本の弥生土器の発色技術を比較するため、朝鮮半島のデータの収集に努めた。現在も分析を進行中であり、来年度中にはその成果を発表する見込みである。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 鐘ヶ江賢二, 三辻利一, 上野禎一: "比恵・那珂遺跡群出土弥生土器の胎土分析-土器の生産と流通・製作技術の理解へむけて"人類史研究. 13号. 137-153 (2002)
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[Publications] 鐘ヶ江賢二, 三辻利一, 上野禎一: "大友遺跡出土土器の胎土分析"佐賀県大友遺跡の発掘調査 II. 41-49 (2003)
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[Publications] 鐘ヶ江賢二, 三辻利一: "前原西町遺跡出土韓半島系土器の胎土分析"前原西町遺跡 II. 25-28 (2004)
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[Publications] 鐘ヶ江賢二, 三辻利一: "吉田遺跡出土土器、およびそれに関連する遺跡採集土器の胎土分析"吉田遺跡の発掘調査. (印刷中). (2004)
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[Publications] 松本直子, 中園聡, 時津裕子編集: "認知考古学とは何か(そのうち、鐘ヶ江は第2章第4節を執筆)"青木書店. 261 (2003)