2002 Fiscal Year Annual Research Report
有機金属高スピンスーパークラスター磁性体の創製とその構造・電子状態
Project/Area Number |
02J09075
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日野 和之 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | クラスター / 磁化反転 / ブロッキング温度 / 超常磁性 / 交換相互作用 / 交流磁化率 / 単一分子磁石 / 単磁区磁石 |
Research Abstract |
多核金属クラスター分子の磁化反転は、U=DS^2(Dは分子の異方性に関係する零磁場分裂定数、Sはスピン角運動量)のエネルギー障壁によって隔てられている。ブロッキング温度以上では、磁化が上向きと下向きの状態間を熱揺らぎする超常磁性現象が観測され、磁石としての性質を失う。従って、単一分子クラスター磁石を実現するには、高異方性・高スピンクラスター分子を構築して、磁化反転を抑えることが必要である。 Co原子とC_2ラジカルが立方体型に交互に並んだクラスターは、擬似縮重した分子軌道をもち、正の交換相互作用によりこれらの軌道に1電子ずつ配置することによって、スピン密度を高めることが可能である。 始めに、CoCl_2とCaC_2のイオン交換反応によりCoC_2クラスターを合成した。極低温でのX_gTの増大は、磁化反転のブロッキング現象を示唆した。 大きなクラスターを合成するために、Co_4(CO)_<12>とCH_2Cl_2を光化学的に反応させた。交流磁化率の交流磁場周波数依存から、単一分子クラスター磁石であることが解った。零磁場冷却(ZFC)磁化の温度依存より、磁化反転のブロッキング温度が16Kと解った。 ブロッキング温度を上げるために、高温・高圧下で、ユニットクラスターを集積して高異方性・高スピンスーパークラスターを合成した。TEM像とEXAFSスペクトルから、Co…C、Co…Coの結合距離が解った。回折パターンとEELSデータから、アモルファス炭素マトリックスの中にCo-C結合をもつクラスターが存在することが解った。ZFC磁化と保磁力は昇温に伴って増大した。これらの現象は多磁区構造の金属ナノ粒子とは全く異なり、クラスターが常温単磁区磁石であることが解った。 以上の結果は、Mn12核やFe8核クラスターより簡単な系で分子クラスター磁石を実現した最初の例であり、大気下、常温で機能する点で応用への道を開くものである。
|
Research Products
(1 results)