2002 Fiscal Year Annual Research Report
ニガウリ種子ウリジン特異性リボヌクレアーゼMC1の構造と基質特異性に関する研究
Project/Area Number |
02J09157
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沼田 倫征 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | タンパク質工学 / X線結晶総合解析 / 基質特異性 / 部位特異的変異法 / ニガウリ |
Research Abstract |
グアノシンに対して高い基質特異性を獲得した2つのRNase MC1変異体(N71TとN71S)のX線結晶構造を決定し、基質特異性の改変メカニズムを検討した。 まず、各変異体と基質類似体であるGMP(グアノシン-リン酸)との複合体の結晶を作製し、大型放射光施設SPring-8にてX線回折データを収集した。変異体とGMPとの複合体の結晶構造を、分子置換法により1.6Åの分解能で決定した。その結果、両変異体とも基質結合部位において特異的にグアニンと相互作用していることが明かとなった。両変異体の基質結合様式はお互い非常に類似しており、Leu73とPhe80の側鎖によるグアニンとの疎水的相互作用、さらに、Gln9と変異を導入した71位のアミノ酸残基(Thr71およびSer71)の側鎖および水分子を介したグアニンとの水素結合のネットワークが確認された。 野生型RNase MC1と変異体の塩基結合様式を比較した結果、Asn71を側鎖の短いThrもしくはSerに置換することで基質結合部位が拡張し、ウラシルより大きなグアニンの挿入が可能になることが明かとなった。さらに、上記のようにグアニンは変異体タンパクおよび水分子と高度に水素結合を形成しており、この水素結合のネットワークが変異体のグアニン特異性に大きく関与していることを示唆した。 さらに、グアニンを優先的に認識するタバコ由来RNase NWのグアニン結合様式(Kawano et al. Biochemistry,2002)と比較した。(RNase NWのThr78がRNase MC1の71位のアミノ酸残基に相当する。)その結果、全体的なグアニン結合様式は非常に類似しており、特に、変異体の71位のアミノ酸残基(Thr71とSer71)とRNase NWのThr78の側鎖が、グアニンと等価な水素結合を形成していることが明かとなった。 以上の結果より、変異体の基質特異性の改変メカニズムを詳細に解析すると共に、RNase MC1の71位のアミノ酸残基が基質特異性を決定する重要なアミノ酸残基であることを示唆した。
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