2003 Fiscal Year Annual Research Report
ニガウリ種子ウリジン特異性リボヌクレアーゼMC1の構造と基質特異性に関する研究
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02J09157
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沼田 倫征 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | RNase MC1 / 基質特異性 / mutagenesis / RNase P / リボ核タンパク質 / Pyroccus horikoshii / X線結晶構造解析 / リボザイム |
Research Abstract |
1.グアノシンに対して高い基質特異性を獲得した2つのRNase MC1変異体(N71TとN71S)の結晶構造を決定し、基質特異性の改変メカニズムを検討した。 まず、各変異体と基質類似体であるGMP(グアノシン一リン酸)との複合体の結晶を作製し、分子置換法によりそれらの結晶構造を1.6Åの分解能で決定した。その結果、両変異体とも基質結合部位において特異的にグアニンと相互作用していることが明かとなった。両変異体の基質結合様式はお互い非常に類似しており、Leu73とPhe80の側鎖によるグアニンとの疎水的相互作用、さらに、Gln9と変異を導入した71位のアミノ酸残基(Thr71およびser71)の側鎖および水分子を介したグアニンとの水素結合のネットワークが確認された。 野生型RNase MC1と変異体の塩基結合様式を比較した結果、Asn71を側鎖の短いThrもしくはSerに置換することで基質結合部位が拡張し、ウラシルより大きなグアニンの挿入が可能になることが明かとなった。さらに、上記のようにグアニンは変異体タンパクおよび水分子と高度に水素結合を形成しており、この水素結合のネットワークが変異体のグアニン特異性に大きく関与していることを示唆した。 2.RNase Pは前駆体tRNA(pre-tRNA)の5'リーダー配列を除去するリボ核タンパク質であり、全ての生物に普遍的に存在する酵素である。本研究では、古細菌Pyrocccus horikoshii由来RNase Pのタンパク質サブユニットの一つであるPh1771pの構造機能相関を検討するため、その結晶構造を2.0Åの分解能で決定した。 Ph1771pのフォールディングは、六つのストランドから成る逆平行βシート(βバレル構造)とそれに付随したヘリックス構造から形成されていたPh1771pのβバレル構造は、これまでに立体構造が決定しているいくつかのRNA結合タンパク質と非常に類似していることが明かとなった。しかし、Ph1771pのアミノ酸配列はこれらRNA結合タンパク質とほとんど相同性が無いことから、これらが共通の祖先型RNA結合タンパク質から進化したことが推定された。 Ph1771pの分子表面には極めて塩基性に富む領域が存在しており、この領域がRNase P RNAもしくはpre-tRNAと相互作用していることが推定された。この塩基性領域に存在する保存されたアルギニン残基をアラニンに置換した結果、RNase Pの活性が著しく低下することからも、この塩基性領域がPh1771pの機能に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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[Publications] Tomoyuki Numata: "Crystal Structures of the Ribonuclease MC1 Mutants N71T and N71S in Complex with 5'-GMP : Structural Basis for Alteration in Substrate Specificity"Biochemistry. 42. 5270-5278 (2003)
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[Publications] Yoshiaki Kouzuma: "Reconstitution of archaeal ribonuclease P from RNA and four protein components"Biochemical and Biophysical Research Communications. 306. 666-673 (2003)
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[Publications] 沼田 倫征: "植物リボヌクレアーゼの気質認識機構 新たな塩基特異性リボヌクレアーゼの創製を目指して"化学と生物. 41・11. 718-723 (2003)