2002 Fiscal Year Annual Research Report
福祉・介護・医療サービス供給に関する契約手法の行政法学的分析
Project/Area Number |
02J09269
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 大樹 九州大学, 大学院・法学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 福祉サービス / 介護サービス / 行政契約 / 福祉契約 / 介護契約 / 介護サービス評価 / 社会保障改革 / 保険者機能論 |
Research Abstract |
今年度実施した研究の成果は以下の2点にまとめられる。 1.福祉・介護サービスの供給に利用されている契約手法を素材として,利用者の権利利益の保護を目的とする手法の日独比較研究を行った。わが国では厚生労働省令である運営基準・報酬基準によって,利用者と事業者との間で締結される福祉契約の内容を広範囲かつ一律に規律し,行政規制が十全になされている限りで利用者の利益保護を図る傾向が見られる。これに対しドイツでは,利用者と事業者との間の契約に対して直接,私法的効力を用いて規制を行う手法(ホーム法による契約規制)と,利用者利益を代表する組織(介護金庫・社会扶助団体等)と事業者利益を代表する組織との間で段階的に合意形成を行い,契約内容を確定させる手法(給付提供法による契約規律)の二つが発達し,両者が連携しつつ利用者の権利利益の保護がなされていることが判明した。 2.行政実務へのヒヤリング調査等により,国・地方自治体の先進的な福祉・介護施策の多くが,利用者の福祉サービス選択権を実質的に保障するために行われ,これらの手法は行政法学の一般理論から見ても興味深いものであることを明らかにした。福祉分野における行政計画の発展,法的意味での行為能力が不十分な利用者に対する契約締結支援手法の萌芽,福祉・介護サービス評価のしくみの開発と試行,利用者のニーズを専門的に分析した上で給付措置を調整するケアマネジメント手法の発達など,福祉・介護分野における先進的な取り組みが各地で行われている。こうした取り組みの現場でのヒヤリング調査を踏まえ,こうした手法の持つ意味を行政法学的な観点から,行政法総論上の概念との関連に注意しつつ分析した。 以上の研究成果を盛り込み,加筆・修正を行った修士論文を九州大学大学院法学研究院の紀要である「法政研究」誌に公表した(原田大樹「福祉契約の行政法学的分析」法政研究69巻4号(2003年)所収)。
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Research Products
(1 results)