2004 Fiscal Year Annual Research Report
福祉・介護・医療サービス供給に関する契約手法の行政法学的分析
Project/Area Number |
02J09269
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 大樹 九州大学, 大学院・法学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 福祉サービス / 介護サービス / 行政契約 / 自主規制 / インフォーマルな行政活動 / 福祉契約 / サービス評価 / 医療管理組織 |
Research Abstract |
これまで実施した研究の成果は以下の2点にまとめられる。 1.福祉・介護・医療サービスの供給に利用されている契約手法を素材として,利用者の権利利益の保護を目的とする手法の日米独比較研究を行った。わが国では厚生労働省令によって,利用者と事業者との間で締結される福祉契約の内容を広範囲かつ一律に規律し,行政規制が行き届く限りで利用者の利益保護が図られる。類似の状況はアメリカにおいても見られ,利用者の権利利益の保護を実効的に行うための公法法理(ステイトアクション等)は未発達である。これに対しドイツでは,利用者と事業者との問の契約に対して直接私法的効力を用いて規律を行う手法と,利用者利益・事業者利益代表組織間で段階的に合意形成を行い契約内容を確定させる手法の二つが発達し,両者の連携によって利用者の権利利益の保護がなされている(多段階・多極的契約の利用)。我が国の将来的な制度設計を構想する際には,ドイツの法システムが最も参照に値すると考えられる。 2.本研究の最終的な目標である,公的任務を遂行する主体の多様化の現象に対応する法理の構築をすすめるべく視野をより広げ,「自主規制」の日米独比較研究を行った。これまでの公法理論は公的主体と私的主体との二元論を前提としており,国家と同視されない主体がたとえ市民の権利・利益に重大なインパクトを与えようとも,これに対する公法規律を発達させようとしてこなかった。しかし,環境法・経済法・情報法といった様々な法分野に見られる自主規制の事例分析の結果,そのような領域に対しても多段階・多極的な行政契約や,立法者による民間主体の組織・手続・法関係規律責務を用いて公法法理の段階的な適用を可能にする理論(公共部門法論)が必要であるとの結論が得られた。本研究が主要フィールドとした福祉・介護・医療分野は,こうした一般理論の見地から最もフィードバック可能性の高い領域であることが明らかになった。
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