Research Abstract |
1.サンプリングおよび野外調査 標本および生態情報の収集を目的として,日本国内(本州および九州,南西諸島)およびタイ北部における採集調査を実施した他,数人の昆虫学者に材料収集面での協力を得た結果,サルゾウムシ亜科甲虫44種のサンプリング(形態比較,DNA解析両用)に成功した.また,うち25種の寄主情報を把握することができた. 2.欧州の博物館における標本調査 (1)2003年9月27日から10月9日にかけてフランス共和国の国立自然史博物館を訪問し,日本産種を中心としたタイプ標本の調査を行った.この調査により,1800年代後半から1900年代前半に公表された原著論文からは種名や属名を確定できなかったタクサの多くが同定可能になった. (2)2003年11月1から9日にかけてスイス連邦のバーゼル自然史博物館を訪問し,東アジア産属の模式種を中心としたタイプ標本の調査を行った.これにより,今までその定義が不明確であった数属の形態的特徴を把握することができた. 3.分類学的・生態学的研究結果の公表 (1)これまで本邦未記録であったCeutorhynchini族のCeutorhynchoides属に関して,形態比較に基づく分類学的再検討を行い.本州および四国,九州,南西諸島から5未記載種の存在を認めた.また,同時に日本産5種中3種の寄主植物を明らかにし,それらの結果を日本昆虫分類学会第6回大会(於愛媛大学)において口頭発表した. (2)今まで単型的とされてきたCnemogonini族のSinauleutes属の分類学的再検討を行い,日本および韓国,ベトナムから新たに5新種の存在を認めた.得られた成果は日本鞘翅学会第6回大会(於九州大学)において口頭発表した. (3)Ceutorhynchini族のCeutorhynchoides属に関する追加的知見をまとめ,日本昆虫学会九州支部大会(於九州大学)において口頭発表した. (4)欧州の博物館における標本調査で得られた知見のうち,新たにシノニム(同物異名)であることが明らかになった日本産3種の分類学的整理を行い,日本鞘翅学会誌Elytraに投稿し,受理された. (5)Mecysmoderini族のBelonnotus属に関して,インドネシア産種の分類学的再検討を行い,2未記載種を含む3種の存在を認めた.この成果は九州大学農学部昆虫学教室が出版しているEsakia誌に投稿し,受理された. 4.分子系統解析 今年度の調査で得られた約100サンプルを追加して,ミトコンドリアの16SrDNA遺伝子の塩基配列を用いて解析を行った.その結果,サルゾウムシ亜科内の系統関係の概要が明らかになった. (1)本亜科には後脚に跳躍器官を持つ「跳ねるサルゾウムシ」と跳躍器官を持たない「跳ねないサルゾウムシ」が含まれるが,「跳ねるサルゾウムシ」は単系統群で,「跳ねないサルゾウムシ」よりも派生的である. (2)ゾウムシの寄主利用の進化には,双子葉類→単子葉類という明確な流れが認められた.また,ゾウムシの系統は木本,草本という植物の属性とは明らかに関連しており,木本植物→草本植物という大きな流れの中で,二次的に木本植物を利用するようになった分類群や草本植物から水草を利用するようになった分類群が存在することが明らかになった
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