2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物の水力学的特性と環境緩和機能の評価と応用に関する研究
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02J09293
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安武 大輔 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水力学的特性 / 蒸散 / 吸水 / 気孔運動 / 通水抵抗 / ガス交換 / 水ポテンシャル / 浸透圧調節機能 |
Research Abstract |
植物-環境系における水の動態は,多くの物理的および生理的過程を通して植物の水力学的特性に支配されるため,その定量的な評価は困難を有する.根圏における水ポテンシャルとの差を駆動力として根から吸収された液相状態の水は,茎などの植物器官を通って葉まで移動し,そのほとんどが気孔から蒸散として大気中へ拡散される.その過程において,植物体内では特に根が液相状態の水移動を,また気孔がその開閉運動により気相状態の水移動を制御している.したがってそれらの環境作用を把握することは,耕地や林地等の微気象解明のみならず作物生理学的にも重要な意義を持つ.本年度は,NFT方式の水耕栽培法を利用して植物個体群における吸水速度の計測を行い,また,植物器官別(葉,茎,根)の水通導特性を,草本植物にも適用可能な加圧水流計を用いて評価し,根圏の水ポテンシャルが植物の水力学的特性に及ぼす影響について調査した. 栽培ベッド,液送ポンプ,計測タンクおよび電磁弁等を用いてNFT水耕栽培の植物個体群における吸水速度計測システムを構築し,培養液にNaCl(100mM)を添加した塩ストレス区と添加しない対照区の吸水速度を計測した.塩ストレス区における吸水速度は対照区の約43%に抑制された.携帯型蒸散測定装置による葉のガス交換特性計測によると,塩ストレス区における気孔コンダクタンスは対照区の約50%であった.加圧水流計によって植物器官別における通水抵抗値を調べると,地上部植物体の通水抵抗値は両区において有意差が認められなかったが,地下部植物体の通水抵抗値は,塩ストレス区において対照区の約1.79倍となり高い有意差が確認された.これらの結果より,根圏の水ポテンシャルの低下による植物-環境系の水の動態は,吸水の駆動力の物理的な低下に加え,気孔開度の減少および植物体内の水通導特性の変化と密接に関係していることが明らかになった.
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Research Products
(1 results)