2003 Fiscal Year Annual Research Report
病原体系統と寄主植物抵抗品種の共進化動態の解析:対抗進化を許さない防除は可能か?
Project/Area Number |
02J09346
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩永 亜紀子 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | gene-for-gene system / マルチライン / coevolution / virulence |
Research Abstract |
本研究では、イネ・コムギなどの栽培植物に対する赤さび病菌・いもち病菌などの病原性菌の進化動態と個体群動態を数理モデルと計算機シミュレーションで解析し、病原体の急速な進化を見越した防除政策について研究を行った。 抵抗性品種に感染できる病原性系統は、エリシター分子の発現を停止するノックダウン変異体である。このようなホストと病原体の遺伝子の特異的対応関係はgene-for-gene systemと呼ばれている。本研究ではこのgene-for-gene systemにもとづいて、様々な抵抗性品種に病原性を示す多重病原性病原体(スーパーレース)の出現を阻止し、収量を最大にするようなホスト植物の作付方法について解析を行った。 1遺伝子座のモデルにおいて、抵抗性ホスト(R)、感受性ホスト(S)、非病原性病原体(A)、病原性病原体(V)の個体群動態のシミュレーションと解析を行った結果、病害を最小にする抵抗性ホストの最適導入率が存在することは前年度の研究により明らかである。本年度は多遺伝子座のgene-for-gene system (2遺伝子座)に拡張し研究を行った。この場合も病害を最小にする抵抗性ホストの最適導入率が存在し、多重抵抗性ホストの過剰な導入を避けることによって病害を減少させることが可能であることがわかった。また、最適導入率いついては解析的に求められることから、病原体を流行させない作付け方法(抵抗性ホストの最適導入率)を具体的に提示することが可能であることがわかった。つまり、多重抵抗性ホストの過剰な導入を避け複数の抵抗性品種の混植によって、抵抗品種に対する病原性系統進化の被害を防ぐというマルチラインの有効性を理論的に証明できた。 現在は、病原体の流行・抵抗性ホスト最適導入率と空間構造の影響について、格子モデルを用いて研究している。
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Research Products
(1 results)