2002 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の安全保障政策―「吉田ドクトリン」の形成過程,1945-1952年―
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02J09390
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
楠 綾子 神戸大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本政治外交史 / アメリカ外交史 / 国際関係論 / 安全保障 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1945年から1950年代前半にかけての時期に、安全保障の大部分を米国に依存しつつ、自衛力を漸進的に増強するという戦後日本の安全保障政策-「吉田ドクトリン」が、日米間の相互作用のなかから形成された過程を明らかにすることである。研究初年度の本年度は、日米両政府における安全保障政策の政策決定過程について事実関係を確定することを課題とし、日本国内と米国での資料収集につとめる一方、その整理、分析作業を行った。 まず、夏期休暇中に米国国立公文書館やトルーマン、アイゼンハウアー両大統領図書館にて、トルーマン大統領時代の対日政策および対東アジア政策に関する国務省、軍部関係の文書を渉猟した。まだ十分に検討していないが、朝鮮戦争の勃発前にトルーマン政権が抱いていた東アジア冷戦戦略は、従来考えられていたよりも地域の内在的発展の促進に重心を置いたものであったことが推測される。また、日本政府関係の資料に関しては、占領期の外務省の安全保障構想について不足している資料を補ったほか、戦時期の外務省の戦後構想に関する政策文書を収集した。太平洋戦争期の日本政府の外交政策は本研究が直接に対象とするところではないが、占領下の外務省の安全保障構想がいかなる思想的基盤の上に立っていたのかをみるうえで、戦時期の外務省の対東アジア政策や国際政治観を検討することが必要であると考えられることから、研究の範囲に含むこととした。資料を分析した結果、戦時期と占領期を通じて、外務省の安全保障構想には普遍的な国際安全保障機構による安全保障よりも地域的な集団安全保障機構を志向する点で一貫していることが明らかになった。来年度は、今年度の成果を踏まえつつ引き続き日米双方の東アジア政策を検討し、その相互作用のなかに戦後日本の安全保障政策を位置づける作業を行いたい。
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