2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09400
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西土 彰一郎 神戸大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 多チャンネル化 / 公共放送 / 放送の自由 |
Research Abstract |
本年度はドイツ法のみならずアメリカ法を参照することにより、「多チャンネル化時代における公共放送の位相」を明らかにしようと試みた。とりわけアメリカ法との比較においては、いわゆる「放送(メディア)の自由」の意義に関して、彼の地の判例・学説・実務では1970年代中ごろを境として徐々に「民主主義的」含意から「経済的」含意へと力点が移ってきた理論的背景を、とりわけ「メディアの経済学」も視野に入れつつ探求し、その脈絡のなかでメディア市場におけるアメリカ公共放送の理念型を呈示しようとした。その成果として「メディアの自由の含意-表現の自由と経済的自由の交錯-」を現在執筆中である。また他方で、ドイツ法との比較においては前年度の研究をさらに発展させて、ジャーナリズム上の競争と経済競争を区別したうえで、「機能的任務」という鍵概念を用いることによりインターネット時代における公共放送の自律の憲法的保障を説く支配的学説を中心に検討してきた。その意図は、既述のアメリカ型との対比を通して、日本法の解釈論を豊富にする点にある。したがって、今後はこの作業を継続することにより、アメリカ型とドイツ型の構造とその背後にある特有の歴史、哲学を慎重に見極めつつ、日本法への援用可能性を析出し、わが国公共放送の憲法的位置づけを行うことにある。その意味で、平成16年1月から同3月までドイツで在外研究を行う機会を得たのは大きかった。この間、現在にいたるまで日本放送協会の組織構造に影響を与えていると思われる国家社会主義時代の放送(ラジオ)法制の資料を多数蒐集でき、さらに多くのメディア法学者(とりわけハンブルク大学のEifert氏)と最新の理論状況について伺うことができたからである。 なお、そのほかに「法律時報」誌のメディア法・情報法に関する「学界回顧」を共同執筆した。
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Research Products
(1 results)