2002 Fiscal Year Annual Research Report
山地流域における土壌塩基プールを考慮した主要塩基流出機構の解明
Project/Area Number |
02J09701
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
成岡 朋弘 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 塩基流出 / 塩基プール / スケール / 生物地球科学過程 / 水文過程 / 交換性塩基 |
Research Abstract |
本研究により山地涜域における塩基流出過程について山地スケール,小流流域スケールおよび斜面スケールの3つのスケールにおいて議論を行なった結果,以下のことが明らかとなった. 1.山地スケールでの塩基流出機構について関東山地における調査により以下の結果を得た. (1)山地渓流水中におけるCa^<2+>の起源はA層やB層で代表される表層土壌層中ばかりではなく,標高の低下に従ってマサで構成される深層風化土層中においても塩基プールからの解離により生じていることが示された. (2)森林流域で生産される大気より高い土壌CO_2濃度は,Ca^<2+>の選択的な溶出を生じ,結果として,岩石化学組成よりCa^<2+>の割合が高くなった. (3)イオン交換や化学的風化作用は標高の低下に従ってその速度が速くなる傾向,すなわち温度依存の傾向が確認できた. (4)地球化学反応が作用する深度についても標高の低下にともなって,より深層におよぶ傾向がみられ,標高の変化は溶出の場にも変化を及ぼしていることが明らかになった. 2.小流域スケールでの塩基流出について竹原試験流域における調査により以下の結果を得た. (1)酸性化した貧栄養土壌が分布する小流域において流出経路の違いが湧水の溶存塩基の成分比に変化を及ぼすことが示された.すなわち,表層土壌層に卓越する水溶性および交換性のK^+, Ca^<2+>およびMg^<2+>が降雨イベント時に斜面表層付近を通る流出経路によって流出し,湧水のK^+, Ca^<2+>およびMg^<2+>の比が高くなった. (2)基底流出時には流出経路が深層にあり,深層において卓越する水溶性および交換性のNa^+が洗出し,湧水のNa^+比が高くなった. 3.斜面スケールでの塩基流出機構について竹原試験流域の試験斜面における調査により以下の結果を得た. (1)斜面スケールでは塩基プール中の交換性塩基は常に変動している点が明らかになった (2)土壌塩基プール中の交換性塩基としてCa^<2+>が卓越していること,特に表層での変動が大きいことから,酸性化した土壌が分布する流域では,塩基,特にCa^<2+>の流出起源としての塩基プールの重要性が示唆された. (3)土壌中での塩基収支を見積もる際,塩基プール中の交換性塩基が変動している場合にはその変動分を考慮する必要性が示唆された. 4.山地流域における塩基流出は上記のように,対象とするスケールによって変化を支える要因やプロセスが大きく異なっている.このことは,塩基流出のプロセスを明らかにするためには,様々なスケールで異なる要因やプロセスを統合的にとらえる必要があることを示唆している.特に,数値的モデルを構築するうえで,上記で明らかになった事項を十分に考慮する必要がある.
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 成岡朋弘, 小野寺真一, 松本栄次: "風化土層中の溶出過程に及ぼす標高の影響:関東山地花崗閃緑岩地域の例"地形. 23・1. 111-121 (2002)
-
[Publications] T.Naruoka, S.Onodera, C.Fujisaki, M.D.Birmano, K.Takeda, I.Kaihotsu: "Evaluation of cation exchange processes in acid soil slope for solute transport modeling in unsaturated zone"Acta Universitatis Carolinae-Geologica. 46・2/3. 439-441 (2002)