2002 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病患者における認知障害メカニズムに関する精神生理学的検討
Project/Area Number |
02J09716
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上田 一貴 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | うつ病 / 予期 / 情動 / fMRI / 前頭前野 / 扁桃体 / 前帯状回 / 認知 |
Research Abstract |
うつ病は、環境や将来をネガティブに考えるなどの認知障害がみられる。また、ヒトの心理・行動実験や動物のうつモデル実験では、うつの認知処理にネガティブバイアスがみられることが示唆されている。これらより、うつ病では、事象の認知情報処理に障害があると推測できる。将来の情動事象の処理に関する脳内機構を明らかにするため、情動刺激を用いた予期的反応課題を行い、fMRIを用いて脳活動を計測した。本年度は、健常者の検討を行った。 方法:健常者15名の予期的反応課題遂行時のfMRIを撮像した。課題は、二つ1組の刺激(S1:幾何学図形、S2:快/不快/中性の情動スライド)を一定の間隔でモニターに呈示した。被験者は、S1-S2の組み合わせを固定した条件(予期可能条件)と、組み合わせがランダムな条件(予期不可能条件)を行った。 結果:予期可能条件では予期不可能条件と比較して、前頭前野で活動が上昇した。快刺激を予期している時では、左背外側前頭前野、左内側前頭前野の活動がみられた。不快刺激を予期している時では、右下前頭前野、右内側前頭前野、右扁桃体、左前帯状回、視覚野の活動がみられた。 考察:将来の情動刺激予期における前頭前野の役割が示唆された。また、左前頭葉は快刺激の予期と関連し、右前頭葉は不快刺激の予期と関連することが示唆された。扁桃体、前帯状回は、不快刺激の予期に重要な役割を果たしており、視覚野におけるネガティブな情報入力を調節していると考えられる。先行研究では、うつ病患者で、安静時の左背外側前頭前野、前帯状回の血流低下が報告されている。以上のことより、うつ病は、快刺激の予期や不快刺激の入力調節に障害があるため、将来をネガティブに考えるなどの臨床症状がみられるのではないかと推測できる。今後は、うつ病患者における検討を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kazutaka Ueda: "Brain activity during expectancy of emotional stimuli : An fMRI study"NeuroReport. 14・1. 51-55 (2003)
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[Publications] Kazutaka Ueda: "Neural processing of emotional stimuli : A magnetoencephalographic study"International Clinical Psychopharmacology. 17. S148 (2002)
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[Publications] Kazutaka Ueda: "Emotional expectancy and activation of the prefrontal cortex : A functional magnetic resonance imaging study"The International Journal of Neuropsychopharmacology. 5. S72 (2002)
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[Publications] 上田一貴: "うつ病患者における前頭葉課題遂行中の脳機能評価-fMRIを用いて-"分子精神医学. 2・3. 83-84 (2002)