2003 Fiscal Year Annual Research Report
情報テクノロジーの進化に伴う宗教相互作用と教義生成過程の変容について
Project/Area Number |
02J09722
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
深水 顕真 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 宗教 / メディア / インターネット / 布教 / 教義 |
Research Abstract |
これまで、インターネットと宗教に関する調査は、手法上の限界から、宗教系のホームページ発信者に限定されてきた。そこでは、布教方法として新奇なものばかりが注目され、信者の視点から本当に何が教団の中で受け入れられているかを捉え切れていない。 そこで、本研究では浄土真宗教団内の各種団体で調査を行うことで、宗教教団の中で、インターネットが宗教行為に与える影響を総体的に把握することを目指した。 具体的には平成14年の浄土真宗仏教青年会全国大会を端緒に、仏教壮年会全国大会、仏教婦人会大会でのアンケート調査を実施し、延べ1600票余りの回答を得た。 さらに郵送法で、寺院名簿から抽出した全国の住職及び輔教(教学の学位)への調査を行い、200票余りの回答を得ることができた。これによって、浄土真宗教団を構成する僧侶、及び信者の階層のほとんどを網羅できたと考えている。 まずこの調査では、一般信者の宗教的インターネット利用率は低いが、仏青や輔教など特定の集団では3割近くが宗教的にインターネットを利用していることが分かった。 さらに宗教意識に関しては、住職や輔教などの僧侶は、各因子に対して否定的見解を示し、特に、インターネット利用者層では、浄土真宗に対する崇高性にすら、否定的見解を示していることが分かった。この結果には2つの背景が複合して存在していると考えられる。 1、浄土真宗が持つ「否定の教学」という側面 宗教的真理は言語化を忌避するものであり、伝統的に肯定的な教義の定義が避けられてきた。 2、ネットワーク構造という「否定の連鎖」 ネットワークの中で、既存のカリスマも埋没し、信仰対象も相対化されている。 さて、現状のインターネットの普及率からは、それが宗教意識に大きな影響を与えたとはいえない。しかし、因子分析から見られる「否定の」傾向は、インターネット世代では増幅しているといえるだろう。本調査からは、こうした信仰対象すら相対化する「否定の」傾向がインターネットによって強められていると結論づけることができる。
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